豪雪地でもスバルの四駆は圧倒的に強い!レヴォーグ・WRXなど「VTD-AWD」/「DCCD」編(1/2)
- 筆者: マリオ 高野
- カメラマン:島村栄二/富士重工業
“ひとつの車種に最多で4種類の四輪駆動システムを設定”する特異なメーカー『スバル』。
ターボとNAのエンジン、さらにはATとMTのミッション違いで、それぞれ搭載する四輪駆動システムを使い分けている差を体感することができる雪上試乗会が北海道で行われた。
今回お届けするレポートは、前回の「ACT-4」編 に続く第2弾。果たして、マリオ高野さんのレポートやいかに・・・。
VTD-AWD(バリアブル・トルク・ディストリビューション/不等&可変トルク配分電子制御AWD)
【搭載車種】 レヴォーグ(2.0L車)/WRX S4
構造:複合遊星歯車(プラネタリーギヤ)式センターデフ+電子制御LSD(油圧多板クラッチ)
基本的な前後トルク配分/前45:後55
通常時のデフフリーの状態でやや後輪寄りの駆動配分とし、前輪の縦方向のグリップ負担を減らしてFR車的な回頭性を追求したシステムで、スロットル開度やエンジン回転、車速、前後輪の回転差をセンシングし、走行状況の変化に応じてトルク配分を制御。低μ路では前後直結状態にも近くなるなど、曲がりやすさと走破性を高い次元で両立させました。国産車ではほとんど類似システムのない、スバルの独創的なメカのひとつといえます。
このシステムが初めて搭載されたのは1991年発売のアルシオーネSVXで、初代アルシオーネやレオーネの時代に「スバル車は安定はするけど曲がらない」「直進は良いがアンダーステアが強すぎる」などと評されたことへの答えとして、スバルエンジニアは威信をかけて「四駆なのにFRのように曲がる特性」を入魂開発。その甲斐あって、「四駆=アンダーステアでつまらない」の定説を根底から覆す四輪駆動システムが誕生したのです。
初期世代のVTD-AWDの基本駆動配分は前35:後65で、今よりもさらにFR的な挙動が楽しめる過激な特性でした。その後、初代インプレッサスポーツワゴンWRXやレガシィのGT系のAT車などの人気モデルにも搭載されると「ATでも楽しい四駆」というイメージが広まり、ターボのAT車と6気筒エンジン車用の四駆システムとして長年搭載され続けることになります。
さらに、現行型フォレスターではターボエンジン車もACT-4が採用されることになり、現行モデルのVTD-AWDの搭載車は2車種になってしまいましたが、やはりVTD-AWDで雪上/氷上を走ると別格の楽しさです。
コーナーでは面白いようにテールスライドを誘発するので無駄な動きは多くなり、ステアリング操作量も多くて運転が慌ただしくなりますが、その分、ドラテク磨きにはもってこいの素材!
運転の初心者には挙動の勉強や反応の練習になり、テールスライドをコントロールできる人ならリアルFR車のように走らせることも可能で、舵を効かすフロントタイヤと、トラクションをかけるリアタイヤのそれぞれの役割が実感できます。リアが出すぎてもフロントがしっかり引っ張ってくれるので、アクセルさえ踏み続ければスピンモードから脱出可能。しかし、やはり操作が遅れるとスピンモードに陥りやすくはなります。
またACT-4と同様にVDCはオフにしても遅れて介入しますが、ACT-4とは違って曲げるための制御ではなく、出過ぎたリアを収束させるために作動しているという印象が強いです。あと、ACT-4ではドライバーに警告する意味も込めて盛大に聴こえてくるVDCの作動音が、VTD-AWDではほどんど聴こえてこないこともクルマの性格を現しているといえますね。
同じレヴォーグのGT-Sでも、四輪駆動システムの違いで2.0L車と1.6L車は雪上/氷上ではまったくの別物。レヴォーグ2.0GT-Sは雪上ではリアルスポーツカーのようであり、氷上での定常旋回では、マリオの運転レベルではVTD-AWDが一番クルクル回りやすく、鎌田選手にほんの少しだけ近づけたような錯覚をおぼえます!(笑)
一方、同じVTD-AWDを搭載するレヴォーグ2.0GT-Sと、WRX S4GT-S(スポルヴィータ)の両者の性格の違いが如実に現れたことも驚きでした。やはりS4は「WRX」なので、運動性能がレヴォーグよりもさらに鋭敏でソリッドであることが明確に。S4のWRXらしさ、ラリーマシンらしさをこれほど濃厚に味わえたのは初めてでした。 正直、S4は(特に245タイヤ装着車は)WRXというより欧州車のDセグセダンに近いクルマになったと思っていましたが、S4はまごうことなきWRXであるという事実を再認識できたのも有意義です。
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