【試乗】スバル「BRZ tS」STIコンプリートカー第二弾(D型・2015年モデル) 速攻レポート/マリオ高野(2/5)
- 筆者: マリオ 高野
- カメラマン:島村栄二
操舵の応答遅れとリアの踏ん張りを高める、STIならではの秘儀の数々
まずは操縦性。これまでのSTIコンプリートカーと同じく、ボディ&シャシーの剛性を高めながらヒステリシスを減らすことで操舵入力時の応答遅れを減らし、リアの踏ん張り感を高めることを突き詰めました。
具体的には、前作のBRZ tSで採用されたフレキシブルドロースティフナーやステアリングギアボックスの貫通ボルトをはじめとする専用補剛パーツ(非公開品も多数)を踏襲し、新たに「フレキシブルVバー」を追加。
BRZの車体剛性を精密に評価すると、ノーマル車のD型で強化されたリアまわりと比べて相対的に低いとされるエンジンルームの一番奥にあたるバルクヘッド部分(エンジンルームと居住空間を仕切る壁)と、フロントのストラットタワー部分の間を補剛することで、この問題を解消。
フレキシブルタワーバーの理論を応用した、中間部分をピロボール化したバーで支えることにより、バーの軸方向には剛性確保。そして上下方向には突っ張ることなく力を逃がして路面からの入力をいなし、内輪の接地を上げる効果が得られています。
高速走行時の踏ん張り感がさらにアップ
前作2013年型BRZ tSでも操舵レスポンスとリアのグリップバランスは素晴らしく、速度域を問わずまったく不満のない悶絶ハンドリングマシンでしたが、高速域でレーンチェンジをしようとした瞬間の4輪の踏ん張り感がさらに増した印象でした。
普通、高速でレーンチェンジをすると外側のタイヤの踏ん張り感が強く伝わってくるものですが、新型では外側と同じぐらい内側のタイヤが踏ん張ってくれている感触がリアルにイメージできるところが衝撃的です。
また、フロントまわりが補剛されているのに、フロントよりもリアの踏ん張り感のほうが鮮明に感じ取れるところは、ステアリングからの入力が遅れることなくリアに伝えられている証拠といえるでしょう。高速レーンチェンジでは車体のハナ先が入るというより、滑らかに並行移動するような感覚で、それを繰り返してもオツリが出そうにならないのがスゴイ!
ドイツ車のオンザレール感とはまた違う、濃密な接地感を堪能する
その異次元の安定感と切れ味の良さはあまりにも痛快で、自車の前後500mぐらいの間に他のクルマが居ないことが確認できたガラガラの中央道・河口湖線にて、ひたすらレーンチェンジを繰り返してヨダレが出そうになりました。
体感的にVDC(横滑り防止)が作動するタイミングが前作2013年式よりも明らかに遅い気がしたことからも、接地性の向上を実感できます。ゲインは過敏ではないのにレスポンスが鋭く、リアは路面に杭を打っているかのようにドッシリと安定している。ドイツ車のオンザレール感とはまた異質の、路面とタイヤの状況をより濃密に実感できるアナログ的な高速安定性に陶酔しきりでありました。
[STI独自のボディ補剛論理とは、何ぞや・・・次ページへ続く]
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