エコカーの真相 第十二回/テレビ・新聞が書かない「EVの真実」(3/3)

  • 筆者: 桃田 健史
  • カメラマン:オートックワン編集部
エコカーの真相 第十二回/テレビ・新聞が書かない「EVの真実」
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「フィットEV」「デミオEV」が、いきなり登場したその理由

「フィットEV」「デミオEV」が、いきなり登場した理由。これは、ZEV対策だ。アメリカ・カリフォルニア州の大気保全局(CARB)が90年代に設定した規制だ。

ZEVとは、ゼロ・エミッション・ヴィークルを意味する。カリフォルニア州は世界で最も排気ガス規制が厳しいとされ、そこでのZEV規制を達成できず反則金を支払うことは、自動車メーカーにとって企業イメージダウンにもつながる。そのため、世界の各自動車メーカーは「EVは、ZEVありき」と言う。

90年代後半に、このZEV規制が厳しくなり、トヨタ初代「RAV4 EV」やホンダ「EVプラス」などが同州内で市販された。

現在は2009年モデル(2008年夏)からの規制対象期間で、トヨタ、ホンダ、日産、GM、フォード、クライスラーがZEV規制で最も厳しい条件をクリアしなければならない。

ホンダ フィットEV

ホンダは当初、燃料電池車の「FCXクラリティ」をZEV枠で想定していたが、北米でのリース販売が予定台数に達しなかった。そのため「フィットEV」の投入が必然となった。

またマツダは、今年11月に発表された2018年モデル~2025年モデルまでのZEV規制で、上記6社に新たに加わった6社のなかに入った。現在、ハイブリッド車も量産型の燃料電池車もないマツダにとって「デミオEV」が必然となったのだ。また、フォード、GM、VW、アウディなども「EVはZEVありき」が本音だ。

さらにいえば、欧米メーカーと日系メーカーは、急速充電器の標準化について対立している。

日系メーカーは直流充電のCHA de MO規格を推進。欧米メーカーは、直流充電と交流普通充電のコネクターを一体化させた「コンボコネクター」を主張している。

両者どちらが世界標準となるのか、または並存するのか?さらには、欧米とも日本とも違う規格を主張している中国が今後、どう出てくるのか?今後どうなるのか、全く予想がつかない。

こうした様々な裏事情があるため、欧米メーカーが基本的に「EVに対してコンサバ」なのだ。またテスラ、フィスカー(正確にはプラグインハイブリッド車/レンジエクステンダー)などベンチャー系については、製造業というイメージより「投資家の投資対象」という位置付けが強い。つまり、浮き沈みの激しいシリコンバレーのIT企業たちと同じだ。

この他、ダイハツ「PICO」、スズキ「Q-コンセプト」などは、本サイトで以前紹介した「超小型モビリティ」だ。これらは基本的に日本市場専用で、日頃の移動にクルマがかかせない地方都市の高齢者向けだ。

乗用車と自動二輪の中間的な存在で、確かにEVなのだが、「リーフ」「i-MiEV」等とは設計思想が全く違う。

以上、EVは様々なバックグランドがあることがお分かり頂けたと思う。

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桃田 健史
筆者桃田 健史

日米を拠点に、欧州、BRICs(新興国)、東南アジアなど世界各地で自動車産業を追う「年間飛行距離が最も長い、日本人自動車ジャーナリスト」。自動車雑誌への各種の連載を持つ他、日経Automotive Technologyで電気自動車など次世代車取材、日本テレビで自動車レース中継番組の解説などを務める。近著「エコカー世界大戦争の勝者は誰だ?」(ダイヤモンド社)。1962年東京生まれ。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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