第42回東京モーターショーは本当に盛り上がったのか~TMS2011 現地レポート~/桃田健史(2/2)

  • 筆者: 桃田 健史
  • カメラマン:オートックワン編集部・東京モーターショー事務局
第42回東京モーターショーは本当に盛り上がったのか~TMS2011 現地レポート~/桃田健史
[東京モーターショー2011]「自動車ジャーナリストと巡る東京モーターショー」のツアーガイドとして活躍中の筆者、桃田健史氏 [東京モーターショー2011]「自動車ジャーナリストと巡る東京モーターショー」 [東京モーターショー2011]「自動車ジャーナリストと巡る東京モーターショー」 [東京モーターショー2011]「自動車ジャーナリストと巡る東京モーターショー」 [東京モーターショー2011]「プロの運転による乗用車同乗試乗会」 [東京モーターショー2011]「プロの運転による乗用車同乗試乗会」 [東京モーターショー2011]「プロの運転による乗用車同乗試乗会」の模様 [東京モーターショー2011]今回初めて会場となった東京ビックサイト [東京モーターショー2011]会場イベント [東京モーターショー2011]一般公開最終日のBMWブースの模様 [東京モーターショー2011]コンセプトカー「トヨタ FUN-Vii」を紹介するトヨタ自動車 豊田章男社長 画像ギャラリーはこちら

「ハチロク」「BRZ」の効果は歴然! でも・・・

[東京モーターショー2011]トヨタ 86の兄弟車「スバル BRZ」
トヨタ 86(ハチロク)[プロトタイプ][東京モーターショー2011]マツダブースにて(雄「TAKERI」)

前評判通り、トヨタ「FT-86」改め「86(ハチロク)」と、富士重工業「スバルBRZ」の周辺は平日でも、クルマの姿が見えなくなるほどの人だかりだった。「クルマ好きコース」参加者の多くも、この2車への関心は高く「2車の走りは、具体的にどう違うのですか?」という質問が多かった。

だが、逆に言えば、結局この2車しか目玉はなかった。この2車と同等、またはそれ以上に人が群がったクルマはなかった。

ちなみに、乗用車のワールドプレミアをご紹介すると、スズキ「レジーナ」、同「スイフトEVハイブリッド」、同「Q-コンセプト」、スバル「アドヴァンスド・ツアラー・コンセプト」、ダイハツ「D-X」、同「PICO」、同「FC商CASE」、トヨタ「FUN-Vii」、同「FT-EV Ⅲ」、同「アクア」、同「FCV-R」、日産「PIVO 3」、同「NV350キャラバン」、ホンダ「AC-X」、同「マイクロコミュータコンセプト」、マツダ「TAKERI」、三菱「PX-MiEVⅡ」、同「ミラージュ」、アルピナ「B6 Bi Turbo Coupe」、同「B3 GT3」、アウディ「A1スポーツバック」、BMW「アクティブハイブリッド5」、VW「パサートオールトラック」、いすゞ「D-MAX」。以上24台だ。

これらを分類すると、以下の3パターンになる。

1)超小型モビリティ:2~3年で法整備され、日本国内専用で登場の高齢者対策車。

2)プラグインハイブリッド・EV・燃料電池車など次世代車の正常進化

3)東南アジアやインドを主市場として、日本でも完成車輸入される世界戦略車。

こうした枠からはみ出すクルマはダイハツ「D-X」くらいだ。つまり今回の東京モーターショーは、日本の自動車産業界が直面している現実に対して正面から挑む、「かなり生真面目なショー」だったのだ。

また一般の来場者は、自動車専門の報道関係者のように、ワールドプレミアばかり注目する訳ではない。特に「輸入車好き」は、ジャパンプレミア(海外で既に発表済み)の実車に接してみたい、という気持ちが強い。それはポルシェ「カレラ」、VW「ザ ビートル」、ロータス「エヴォーラS IPS」、レンジローバー「イヴォーグ クーペ」、メルセデス「Bクラス」、MINI「クーペ」、プジョー「3008ハイブリッド」、アウディ「A1スポーツバック」などだ。

キワモノにあらず! 「トヨタ FUN-Vii」が照らし出す未来

[東京モーターショー2011]「トヨタ FUN-Vii」
[東京モーターショー2011]ダイハツ ミライース[東京モーターショー2011]ホンダブース 「Honda MICRO COMMUTER CONCEPT」

また今回、単独のクルマ展示で最も大きなスペースをとり、そして来場者の多くが理解出来なかったクルマ。それが、トヨタ「FUN-Vii(ファン・ヴィー)」だ。花模様がボディ面に映し出される不思議なクルマ。「Fun Vehicle Interactive Internet」を具現化し、ボディ面、そして背後の巨大な曲目スクリーンに近未来ドライビングスタイルの光景が映し出される。

実は「FUN-Vii」には裏がある。これはけっして、10年後、20年後、30年後のEVをイメージしている訳ではない。なんと、2~5年後に、日本の一般的な自動車ユーザーが直面する現実を描いているのだ。それが、テレマティクスだ。もっと言えば、スマホとクラウドによるテレマティクスだ。

カーナビ、ソーシャルネットワーク、ぶつからないクルマ、ETCなど、自動車産業と情報通信産業が完全融合する日が、もうすぐ、目の前に迫っている。だからトヨタはいま、宣言したのだ。一般ユーザーに向けて、そしてトヨタグループ関連のサプライヤー(部品供給企業)に対して。「ハチロク」の展示の10倍は広いスペースで「FUN-Vii」を掲げて、「時代はいま、大きく変わる、変わらざるを得ない」と。

今回、24年ぶりに東京都内開催となった東京モーターショー。その24年前とは、1987年。バブルの初期で、日本全体がイケイケドンドンだった。当時の展示車は、スーパーカーっぽい日本車だったり、50年後の自動車社会だったり、クルマを使った「夢物語」を描いていた。そうしたステージ上のドリームカーを愛(め)でながら、ステージ下の量産車の座り心地を確かめていたものだ。

対する2011年、来場者のお目当ては、ステージ下の量産車だ。トヨタブースの「ハチロク」は小型ステージ上にあったが、スバルブースの2台ある「BRZ」のうちの1台はステージ下にあり、一般来場者が運転席に座ることが出来た。ステージ上のクルマたちは、あまりに現実的な近未来を描いている。そのため一般来場者は「まあ、参考にはなったけど」という見方しか出来なかったはずだ。

第42回東京モーターショーは、「面白い」/「面白くない」という視点で見るべきではない。東京モーターショーが、「大きく変わった」と見るべきだ。

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桃田 健史
筆者桃田 健史

日米を拠点に、欧州、BRICs(新興国)、東南アジアなど世界各地で自動車産業を追う「年間飛行距離が最も長い、日本人自動車ジャーナリスト」。自動車雑誌への各種の連載を持つ他、日経Automotive Technologyで電気自動車など次世代車取材、日本テレビで自動車レース中継番組の解説などを務める。近著「エコカー世界大戦争の勝者は誰だ?」(ダイヤモンド社)。1962年東京生まれ。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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