ポルシェにも認められた韓国タイヤメーカーが新たに日本に挑む理由(2/4)
- 筆者: 吉澤 憲治
- カメラマン:吉澤 憲治/ネクセンタイヤ ジャパン
待ち受けていたのは、最新鋭世界最大級クラス!?
成田から約2時間、釜山・金海国際空港に降り立った我々は、まずは釜山駅へと移動。
ここからソウル行きの韓国版新幹線KTXに乗車し、約40分かけて中南部の都市大邱(テグ)へと向かう。東大邱駅ロータリーで出迎えてくれたのはNEXENのロゴをあしらったヒュンダイ製の社用マイクロバス。
30分ほど高速道路を走っただろうか、ようやく到着したのが、世界最新鋭の生産設備を有するネクセンタイヤ 昌寧(チャンニョン)工場である。
風光明媚な丘陵地帯を切り拓き、約61万平方メートルの広大な敷地に建つここチャンニョン工場は2012年に操業を開始。工場建屋は端から端まで約1kmあり、混合工程から製造、そして検査、物流まで一直線で管理できる体制を整えている。つまり工程によって建屋を変えることなく、効率良く一貫した生産が可能となり、今ではタイヤメーカーとして世界最大級の生産規模を誇るほどだ。
ネクセンタイヤはここチャンニョン工場の他に、アジアでは韓国の梁山(ヤンサン)工場と中国の青島(チンタオ)、そして東欧はチェコにも工場(2018年稼働予定)を持つなど、この4拠点でグローバルへ向けた量産体制を整えている。今回のチャンニョン工場とチェコ工場は云わば東西のマザープラント的存在となる。
チャンニョン工場の現在の生産本数は年間で1100万本。今後は設備拡大を促進させ2024年にはさらに2倍、そして現段階の最終目標としては3倍強にも達する生産能力を持たせる計画だ。
右も左もとにかくバーコード!
早速、工場内に案内されるが、作業員が見当たらないことに驚かされる。聞けばここの生産ラインは泣く子も黙るフルオートメーション。納得だ。
これまでの大量生産現場では品質のバラつきが大きな課題だった。しかしフルオートメーション生産で製品全てをバーコード管理することで、安定した生産を可能とし、市場に出る欠陥数は極限のほぼゼロという状態を常に目指している。万が一合格基準を満たさない製品が出てきても、そのバーコードで製造過程を遡り、どの工程で発生したかを瞬時に特定できるプロセスを執っている。フルオートメーションにした理由は、コストを削減して安価な商品を提供する狙いがあるから、と言うよりも、単純に品質重視の生産体制を維持することを最重要と考えている。ネクセンの経営を支えるのはコストよりも“品質管理”なのだ。
ここで、ふとあることに気づく。これまで様々なタイヤ工場を見学したことがあるが、そこでは入るなり、ムワッとした熱気と強烈なゴム臭が鼻をついた。しかしここにはそれがない。“ない”は大袈裟だが、温度は快適、異臭もほとんど気にならないほどだ。
聞けば、最新の空気浄化と空調システムが導入されており、24時間稼働(毎日4組3交替制)のためか、これまで大量に放出されていたCO2の削減へ向けて徹底した管理も行われているとのことだ。
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