トヨタに降りかかる火矢の雨/日下部保雄のコラム
- 筆者:
トヨタに降りかかる火矢の雨/日下部保雄のコラム
プリウスのリコール問題。
異例とも言える豊田章夫社長の3回にわたる記者会見など、依然トヨタ側は収拾に躍起だ。トヨタはプリウスという13年かけて培った大きなブランドに、傷がつかぬよう対応に必死なのだ。一方、ユーザーはリコールや改善対策、またサービスキャンペーンといった内容など、何がなんだかわからない状態が続き不安だけが募る。
そもそもリコールとは、保安基準に対して不適合な可能性を持つ設計や、それに基づいた製作過程によって、不具合が出る可能性があることを、国土交通省へ届け出るものを指す。ブレーキが効かないというのはこの最たる例だ。ただ、リコールは欠陥車の代名詞のようにいわれることが多いが、今後故障する可能性があるものまで含めると早期改善で悪いことではない。
今回のプリウスの場合は、結果的にメーカーの姿勢を見せるためにリコールにせざるを得なかったが、ブレーキが効かなくなることはないので微妙なところだ。トヨタが最初サービスキャンペーンで対応しようとしたのも肯ける。
もう1つは、改善対策自体はリコールには至らないが、そのうち不具合が出そうで、安全には直接影響しない部分。例えば同じブレーキでも踏力が大きくなったり、ハンドルが重くなったりする場合だ。
リコールと改善対策は国交省の公式文書に公示される。さらにサービスキャンペーンは、このいずれにも該当しないもので、特に問題はないが実施したほうが良いだろう、というレベルのものだ。
まさにフィーリングの改善だ。したがってトヨタはプリウスの制動距離が場合によってはホンの僅かに伸びることがあるという現象をフィーリングの問題として対応したわけだ。ブレーキは踏めば完全に効くからである。
このサービスキャンペーンは国交省の公式サイトには掲示されず、メーカーがユーザーと直接行うものだ。いずれにしてもこの3つともメーカーと国交省の指導の下に決めることになる。この問題はアメリカに火種を持ったものなのだが、メーカーの解釈の説明が誤解を招いて、トヨタが逃げているように感じた人がいたのは事実。
それにこれだけ多くのプリウスが日本中のいろいろな所を走るようになると、発生する事象もテストコースでは現れないモノが突如出現したりすることもあるだろう。ユーザーのフィーリングは敏感だったわけだ。
日本のユーザーは比較的冷静だったし、マスメディアも何が起こっているのか正確に報道しようと言う姿勢が感じられる。世界最高のハイブリッドへの信頼は少なくともこの日本では落ちていないように感じた。
ところで北米における一連のトヨタたたきは、不気味な過激報道という印象を受ける。それにトヨタからGM、フォードへの買い替えキャンペーンなどは、やけにタイミングがいい。
付け入る隙を与えてしまったトヨタの危機管理が確かに甘かったのは事実だろう。危機管理の対応は、時間との競争と言うことを改めて示した事件でもある。やっと徐々に浮上してきた景気の回復も遅れそうだ。
それにしても日本政府はアメリカでの騒ぎの根に対して鈍感すぎるのではなかろうかと言う気がするのは私だけだろうか?
この記事にコメントする