マリオが一般道にいっぱい! 外国人に大人気のマリカー(公道カート)が規制されないワケ

マリオが一般道にいっぱい! 外国人に大人気のマリカー(公道カート)が規制されないワケ
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「おかしい」と思うことが問題の原点

「やっぱりこれって、何かおかしいでしょ?」

東京ど真ん中、銀座通りや都内観光名所等を走り回るゴーカートたち。限りなく有名キャラクターに似た着ぐるみを着て隊列走行している。運転している人は外国人が圧倒的に多い。

ここ数年で、東京だけではなく、大阪などでも日常的な光景となった公道カートによる観光ツアーに対して、日本人が「なんだか、おかしい」という気持ちを抱くことは、至極当然だ思う。

・なぜ、ゴーカートは普通のクルマと一緒に走っているのか?

・なぜ、オートバイのようにヘルメットを被らないのか?

・なぜ、外国人が多く利用するのか?

また、テレビ、新聞、ネットで、公道カートが自動車と接触事故を起こしたとか、信号待ちの時に車線の真ん中でカートから降りて記念撮影をするなどの危険行為をしたとか、そのような報道がされている。

なぜ、そんな危ない乗り物を警察は走行禁止にできないのか?

こうした様々な疑問によって、日本の多くの人は公道カートの在り方について「おかしい」と思っている。

なぜ、こんなに「おかしい」乗り物が正々堂々と生き延びているのか?

>>都内などの一般道をマリオの格好等で走り回る公道カート

これも超小型モビリティ?

法律では、公道カートは道路交通法の「ミニカー」に属する。

排気量が50㏄以下で、最高出力が0.6kW以下の小さなクルマだ。クルマであるため、運転するには普通免許が必要だ。しかし、ミニカー規定では、ヘルメットを被る必要がなく、またシートベルトの着用義務もない。そして、道路交通車両法では、公道カートは原動機付自転車に属する。

こうした「ミニカーと原付の狭間の乗り物」の在り方を含めた、小型の移動体に対する大規模な法改正について、国は8年ほど前から議論を続けている。それが、超小型モビリティだ。

筆者は過去8年間に渡り、国土交通省への取材や、全国各地で実施されてきた超小型モビリティの実証試験の現場を数多く見てきた。

その多くは、現行のミニカー規定で市販されているトヨタ車体「コムス」を使った社会実証だった。また、日産は仏ルノー製の小型EVを「日産ニューモビリティコンセプト」、またホンダは新規開発した「MC-β」を使い、 日本での量産を視野に入れた研究開発を続けてきた。

しかし、そうした実証試験がほとんどで、国民が「どうしても超小型モビリティが必要だ」と、国と国民の双方が納得がいく成果がほとんどなかった。それでも成功事例を見つけるとして、国は超小型モビリティに関する実証試験を継続しているが、現状として”出口が見えない”状況だと言わざるを得ない。

そうした超小型モビリティに対する国の煮え切らない姿勢が、公道カートという法の隙間での商売を事実上、認めることになってしまったといえる。

立ち乗りロボットはどうなる?

また、超小型モビリティに関連した話として、立ち乗りロボットについても触れたい。

公道カートは、外国人観光客による人気が高い。なぜならば、世界の大都市で、ここまでラフな雰囲気で楽しめる公道アトラクションは稀だからだ。

自らが運転して楽しむ市街地観光ツアーといえば、セグウェイをつかった事例が欧米の主要観光地での定番となっている。ただし、多くの場合、自転車用ヘルメットを着用するなどの安全対策を講じている。

日本において、セグウェイなどの立ち乗りロボットは現在、公道で走行することはできない。大型レジャー施設など、私有地内での利用が主体だ。また、歩道などを使ったツアーについては、茨城県つくば市が国の特区制度を活用したのを皮切りに、現在では東急電鉄が二子玉川駅周辺での有料ツアーを実施中だ。

その他、トヨタがソニーからプロジェクトごと引き抜いたウイングレットがあるが、こちらもトヨタ関連の商業施設内での利用などに限定されており、市販化の話はまったく進んでいないのが実情だ。

そもそも、こうした立ち乗りロボットは、超小型モビリティの枠組みの中で議論されてきたが、法整備を進めることに対して、安全の確保が難しいとして警察庁が首を縦に振らないなどの理由から、超小型モビリティとは”別モノ”として扱われるようになり、 現状では公道での利用を目指す動きは”宙に浮いた状態”である。

こうして、ミニカーや立ち乗りロボットに関する法整備がなかなか進まない中、現行法の隙間をついて公道カートが走り回っているのだ。

>>都内などの一般道をマリオの格好等で走り回る公道カート

論点は「本当に必要か?」の1点のみ

公道カートをこれからどうするのか? この議論における論点は、「社会にとって本当に必要か?」との1点のみだ。

議論に加わるべきは、利用者、事業者、警察庁、都道府県各県警本部、国土交通省、経済産業省など、公道カートに直接関わりを持つ人や行政機関だ。

必要だ、という結論ならば、国土交通省や警察庁から事業者に対しての”注意喚起”といった中途半端なことではなく、現行の道路交通法や道路車両運送法の一部改正が必然だ。

また、それをステップ1として、ステップ2では超小型モビリティを含めた総括的な法整備を進めるべきだ。その中では、公道カートの他、交通社会における”グレーゾーン”となっているハンドル式電動車椅子についても、しっかりとした規制が必要だ。

公道カートという隙間ビジネスは、結果的に小型モビリティ改革に対して、国のお尻に火をつけたのかもしれない。

[Text:桃田健史]

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桃田 健史
筆者桃田 健史

日米を拠点に、欧州、BRICs(新興国)、東南アジアなど世界各地で自動車産業を追う「年間飛行距離が最も長い、日本人自動車ジャーナリスト」。自動車雑誌への各種の連載を持つ他、日経Automotive Technologyで電気自動車など次世代車取材、日本テレビで自動車レース中継番組の解説などを務める。近著「エコカー世界大戦争の勝者は誰だ?」(ダイヤモンド社)。1962年東京生まれ。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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