F1GP最年少記録樹立のマックス・フェルスタッペンの走行に物議(1/2)
- 筆者: 山口 正己
- カメラマン:Red Bull Racing
1997年生まれの少年が若さ丸出しの走行
F1ドライバーの若武者マックス・フェルスタッペンが大暴れである。彼は5月のスペインGPで優勝して、F1GP最年少記録『18歳』を樹立したオランダ人。1997年9月3日生まれの少年が、若さ丸出しの縦横無尽の走行で物議を醸している。
8月末のスパ・フランコルシャンのベルギーGPでは、スタート直後の1コーナーで、フェラーリのキミ・ライコネンのインサイドに無理やりノーズを突っ込んで接触のきっかけを作った。新しいところでは、10月30日のF1GP第19戦メキシコGPの終盤、フェラーリのセバスチャン・ベッテルを強襲、3位でゴールしたのだが、先陣争いの際にコースをはみ出していたことで5秒間のペナルティを食らって表彰台をフイにした。
例に挙げたのはどちらもフェラーリ、フェラーリのドライバーは二人ともワールドチャンピオンのトップクラスだが、そんなことはまったく意に介さない19歳は、だからとやかく言われるところでもある。
スパ・フランコルシャンの一件で、キミ・ライコネンが「このままではいつか大きなアクシデントになる」と“お仕置き”を要請した。しかし、マックス・フェルスタッペン、まったく意に介せず、「どこが悪いのかわからない。小さいころからやっているレースのスタイルを変える気はないよ」とあっけらかんと言ってのけ、ますます、可愛げのない態度である。
F1は、いうまでもなくタイヤが飛び出したフォーミュラカーのレースであり、接触のリスクを回避するための不文律がある。抜かれまいとして進路を変更するのはある意味前を走る者の権利だが、基本としてその動きは1回限りと規制されている。蛇行してブロックするのは、見た目も美しくないし、後続のドライバーの予測を越えて極めて危険な状況になるからだ。しかし、マックス・フェルスタッペンは平気で何度も進路を変え、だからキミ・ライコネンはご注進したのだが、意に介せず。
レースで『危ない』はダメ、でも『危なっかしい』が無いと単なるパレード
そもそも、初優勝したスペインGPは、マックス・フェルスタッペンに注目が集まるレースだった。レッドブルの弟分チームのトロロッソから、本家レッドブルに突然の移籍。それだけで充分、話題騒然だったのだが、そこで勝っちまった。ある種“持っている”少年は、セバスチャン・ベッテルが持つ21歳と73日の最年少GP記録を18歳と227日に大幅更新。
たぶん18歳の記録は未来永劫に破られることはないと思えるけれど、そのご褒美に、ポルシェ993なんぞ手に入れてしまったのである。18歳で。調子に乗るなという方が間違っている。
とはいえ、危ない走りは危ない。ここで、F1マシンが、フォーミュラというジャンルの頂点にあり、そのフォーミュラカーはタイヤが飛び出していることを思い出しておきたい。
危ないからタイヤをカバーすべきという意見もあるが、それはモーターレーシングの基本を理解していない意見だ。危ないからやめるのではなく、危ないことを、スキルと勇気で回避するのがワザであり、そこに意義がある。カッターナイフが危ないから使わせないではなく、安全な使い方を覚えて便利に使うことが重要だ。
誤解なきように補足すると、モーターレーシングは危ないから面白いのではない。自動車レースは度胸試しではないのだから。もちろんその側面もあって、凛々の勇気は必要だけれど、完全に危なくなくしてしまっては面白味がなくなる。『危ない』のはだめだが、『危なっかしい』がなくなると、単なるパレードになってしまう。
『危ない』と『危なっかしい』の線引きが難しいところで、だからマックス・フェルスタッペンの走り方は、外野と本人の意見が食い違ってくる。
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