クルマ開発は目に見えない「空気」への挑戦!プリウスの燃費も、F1の速さも「空力」がキモ!(3/3)
- 筆者:
- カメラマン:本田技研工業/VOLVO CAR/トヨタ自動車
風上に進めるヨットの理論
ここで、ダウンフォースの基本として、知っておきたいのがヨットの理論だ。ヨットが風上に進むことはご存じだろう。風に押されれば風下に動いてしまうはずなのに、そうではない。それは、飛行機の翼と同じ原理が働くからだ。
ヨットの帆は、風を受けると翼断面形状になるように工夫されている。マストが帆の中央からややオフセットして取り付けられていて、その結果、翼形を創り出す。飛行機の翼が立って着いていると思えばいい。風が当たると、帆は翼形になり、膨らんだ方向に引っ張られ、だからヨットは風上に進む。
F1を初めとするレーシングカーには、鼻先からお尻に至るまで、空力パーツで埋めつくされているが、基本はヨットの原理に沿っている。その組み合わせで空気をどう流すかが考えられているわけだ。
目に見えない空気の流れを使ったF1の戦い
たとえば、F1のリアウィングに注目してみよう。翼のようなウィングは下向きの揚力(ダウンフォース)を発生する形になっているのだが、実は翼を支えているだけに見える翼端板も、ダウンフォースに貢献している。
翼端板を上からみると、その外側より内側の方が空気の流速が高くなる形になっていることに気付くだろう。翼端板の内側の空気の流れが速くなれば、それは結果としてウィングの下側の気圧を下げることになり、結果としてダウンフォースが増える。
目に見えない空気の流れを使ってコーナリング性能を高めていることが理解できれば、F1の闘いが、さらに崇高に見えてくるかもしれない。
後半戦に入ったF1、パワーユニットが進化した今、マクラーレン・ホンダは、さらに“空力”に力を入れることになりそうだ。
[Text:山口正己]
この記事にコメントする