「レクサス」はなぜ「メルセデス・ベンツ」に勝てないのか(2/4)

「レクサス」はなぜ「メルセデス・ベンツ」に勝てないのか
レクサス GS レクサス SC レクサス RC/RC F 初代トヨペットクラウン キャデラック 452A 初代カローラ レクサスディーラーのイメージ 2006年に発売されたレクサスLS トヨタ 新型クラウン レクサス LC500 画像ギャラリーはこちら

日米で異なる事情(1)/北米では「低価格ブランド」、日本では「高級ブランド」であったトヨタ

初代トヨペットクラウン

トヨタは初代クラウンの時代から対米輸出を開始しているが、北米では(他メーカーを含めて)ほとんど成功しなかった。日本車が注目されたのは1970年代前半のオイルショックからで、理由としては日本車の「低燃費」「低価格」「故障の少なさ」が歓迎された。

つまり、北米における日本車は“実用重視の低価格ブランド”であり、高級車のイメージには合わない。そこで別途、高級ブランドとして「レクサス」が設けられた。

ちなみに初代ダットサン240Z(日産 初代フェアレディZ)はオイルショック以前にヒットしたが、これも人気の裏には「直列6気筒エンジンを搭載したスポーツカーを“安く買える”こと」という背景があった。

一方、日本におけるトヨタ車のスタートは北米とは違って一般的には1955年に発売された初代「クラウン」だ。

この後、コロナ(現在のプレミオ)、カローラ、マークII(現在のマークX)と車種を普及させたので、もともとが高級なイメージも兼ね備えていた。トヨタが、北米におけるレクサスの位置付けまでカバーしていたことになる。

日米で異なる事情(2)/古くから「階級ブランド」が存在した北米、「ボディが大きなクルマが高級」な日本

キャデラック 452A

北米メーカーは吸収合併を繰り返した経緯もあり、例えばGM(ゼネラルモーターズ)であれば、キャデラック/ビュイック/オールズモビル/ポンティアック/シボレーといったブランドが存在し、「大きなシボレーよりも小さなキャデラックが高級」と認知されている。

この階級の考え方は様々なところに浸透しており、エアラインも古くからファースト/ビジネス/エコノミーに分かれている。客室だけでなく待ち時間を過ごすラウンジや搭乗の順番まで区分され、つまり社会のあり方がクルマに影響を与えた。

日本のトヨタは「ボディやエンジンの排気量が大きなクルマが高級」というヒエラルキーを築いた。上からクラウン/マークII/コロナ/カローラ/パブリカという具合だ。

ほかのメーカーも同様で、もともと日本のトヨタにブランドで階級を区分する概念は存在しなかった。

また個人的な意見だが、日本では階級の考え方は好まれず「同じ釜の飯を食う」という発想が根強い。例えば大企業の発展期を振り返ると、その多くが社長室などを持たない「大部屋」で仕事をしている。

今でも社長などの富裕層に、特別扱いされることを嫌う人は多い。

日米で異なる事情(3)/サービスに問題を抱えていた北米ディーラー、元々質の高かった日本のディーラー

レクサスディーラーのイメージ

トヨタによると「北米における自動車ディーラーは、歯医者と並んで最も行きたくない場所」という調査結果があったという。

そこで北米のレクサスでは、ていねいな接客を心掛ける、修理などのサービスは顧客から注文された通りに行う、納期は確実に守るなど、顧客が快く来店できるサービスと店舗作りを行った。

上記の北米市場におけるレクサスのサービスは、日本のトヨタ系ディーラーの方式をそのまま水平展開しただけだ。

どれも当たり前の話だろう。日本のディーラーにも差はあり、セールスマンやサービスマンの個性もさまざまだが「歯医者(これも最近は快適になったが)と並んで行きたくない」とは思わない。

日米で異なる事情(4)/顧客がディーラーに足を運ぶ北米、セールスマンが訪問してくれる日本

北米の場合、顧客がディーラーに出かけるのは当然だ。またホテルでも、食事はレストランに出かけて食べる。「もてなし」は来店した顧客に対して行われる。

最近の事情と少し異なるが、高齢になったクラウンの顧客でディーラーに出かけたことのない人は多い。車両の契約から、点検の引き取りや納車まで、セールスマンが自宅に来てくれる。

同様のことは日本のさまざまなサービスに当てはまる。例えば日本の旅館は、安い宿でも食事を運んでくれて、蒲団も敷いてくれる。昭和の時代には、酒屋の店員さんが「奥さん、何か不足してませんか?」と訪ねてきて、醤油の1本でも配達する「御用聞き」が一般的だった。

つまり日本における一番の「もてなし」は、「お客様に足を運ばせず、売る側が出向くこと」だ。高級な店舗に来店させることではない。

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渡辺 陽一郎
筆者渡辺 陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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