時速371km、賞金10億円・・・“常識外れ”の世界!「インディ500」はまさにアメリカンドリーム!(2/2)
- 筆者: 山口 正己
あまりのスピード域にスリップストリームも“強烈”
1台で走れても私はお断りするが、腕に覚えがあるレーシングドライバーなら走ることはそう難しくないかもしれない。
しかし、レースにはライバルがいる。インディ500のグリッドには33台が並び、他車の動きが大きく影響する。それは、クルマが“周辺の空気をかき混ぜながら走る”からだ。
クルマの後ろに張り付き、空気抵抗を減らしてスピードを上げる“スリップストリーム”。それが半端なく強烈に効く。前や後ろのクルマが急激に進路変更を行なうと、居場所に寄っては目には見えない空気の流れに進路を乱されてスピンする。まさに、合気道の空気投げだ。
勝負は「最後の30周」
さて、単純なコースをグルグル回っているだけに見えるオーバルコースだが、超高速で走るとなると些細なクルマの状況がスピードを左右する。ウィングの角度やタイヤの空気圧を、ピットイン毎に気温や周囲の状況などを読み取りながら有利になるように調整する。
勝負は200周レースの残り30周あたりから。そこまでのレース中に気温や湿度、周囲の状況を計算に入れてウィングの角度や空気圧などを微調整して「クルマを作っていく」とロジャー氏。最後の最後に最適なセッティングにして、勝負をかけるのだ。
問題は、出ている全員がそのことを知っていて、最後の30周に向けてレースを消化していること。勝つのは一人だけなのだから。
これぞ、まさに「アメリカンドリーム」
インディ500の翌日は、優勝者が歴代ウィナーの顔が掘られた巨大な銀色の優勝トロフィーと一緒に記念撮影を行なうことになっている。画面の端に新聞の束が高々と積まれている、と思ってよく見たら札束だ。アメリカンドリームが明確な写真で全世界に流されるのだ。
1989年に初めてインディ500を見物したとき、最後の10周でエマーソン・フィティパルディというブラジル人と、アル・アンサーJr.という若いアメリカ人の先陣争いになった。
歓声だけでなく観客の大ウェーブが巻き起こり、壮観な眺めに圧倒された。
今年、ウェーブを起こさせるのは誰だろうか。佐藤琢磨は、予選11番手。レース中にクルマをうまく作ることができれば、オーバルコースなら、充分可能性があるポジションだ。
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