なぜ近年の「新型車」はヒットし辛いのか、販売ランキングに見る“新型車不振”の理由(2/2)

なぜ近年の「新型車」はヒットし辛いのか、販売ランキングに見る“新型車不振”の理由
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新車販売ランキングの半数が「軽自動車」という実態

ダイハツ タント
日産 デイズ(デイズ ハイウェイスター)ダイハツ ムーヴ

2015年度 新車販売ランキングトップ20の内訳を見ると、軽自動車が10車種を占める。

2015年度は新車販売されたクルマの37%が軽自動車だったから不思議は無いが、販売ランキングの上位車種は軽自動車への依存度が特に強い。

小型&普通車は10車種だが、その内の8車種は5ナンバー車で、ヴォクシー以外は1.2~1.5リッタークラスのコンパクトカーになる。3ナンバー車はプリウスとヴェゼル(これもコンパクトSUVだが)だけだ。

ダイハツ タント

この内訳から読み取れるのは、軽自動車を含めて「実用的な車種が売れ筋になっている」こと。

車種ごとに個性があって走りの楽しさも味わえるが、重視されるのは運転のしやすさ、居住空間の広さ、燃費性能、割安な価格などになる。となればこれらを買うユーザーも、情緒ではなく、使用目的と予算に応じて冷静に愛車を選ぶ。

以前のクルマ選びでは、ユーザーの「新型車に乗って注目されたい」という感情が働いたが、今はその度合いが下がった。愛車の車検満了が近づくなど、ムダなく代替えできる時期に自分に最適な車種を客観的に選ぶようになった。

背景には、クルマの進化が穏やかになったこともある。緊急自動ブレーキを作動できる安全装備、燃費数値、走行安定性は今でも向上しているが、内外装のデザイン、車内の広さ、加速性能、快適装備などは一種の上限に達して進化が乏しい。だから登場して4年以上を経たアクアやN-BOXでも古さを感じにくいのだ。

現在も古さを感じさせない「トヨタ エスティマ」

トヨタ エスティマ
トヨタ エスティマトヨタ エスティマ

最も分かりやすいのは「トヨタ エスティマ」だろう。

現行型の登場は2006年1月だから10年以上を経過するが、個性的な卵型の外観などによって古さをあまり感じない。今でも1ヶ月に1000~1200台程度(アテンザやレガシィと同等)に売れる。

今後もフロントマスクの変更、緊急自動ブレーキの装着を伴うマイナーチェンジを施して販売を続けることになった。

そしてアクア、N-BOX、エスティマなどは、機能やデザインの特徴がハッキリしているから、信頼感を伴う一種のブランドになっている。運転がしやすく燃費に優れ、価格の割安なハイブリッド車を選ぶならアクア。居住性と積載性が優れたミニバン感覚で使える軽自動車ならN-BOX。実用一辺倒ではない洗練された上質なミニバンならエスティマという具合だ。

いま、クルマが売れる条件は「実用性を伴ったサプライズ」があること

ホンダ N BOXスズキ スペーシア

ちなみに今のクルマが売れる条件は、ひと目で「おおっ、これはイイよね!」と顧客の購買意欲を高める「実用性を伴ったサプライズ」があること。

N BOXの広い車内、タントのワイドに開く左側のミラクルオープンドア、フィットのボディサイズの割に広い後席や荷室、アクアの燃費数値(今はプリウスに抜かれたが)は、すべて実用的な機能で、なおかつ見た人を驚かせた。

このような売れる条件を備えた車種は、時間を経過しても販売面で好調を保つ。アクアは2015年度も1ヶ月に約1万6,000台を登録したから、発売時点における月販目標(1万2000台)の約130%という勢いだ。

N BOXは、N BOXプラスと同スラッシュが苦戦するから一概にいえないが、現在のN BOXシリーズ全体の月販台数は約1万4400台。N BOXの発売時の月販目標(1万2000台)と対比すれば120%に相当する。

クルマは自分の使用目的と予算に合った車種を選ぶのが好ましいから、商品力の高い車種が時間を経ても安定的に売れ続ける今日の状況は納得できる。

スズキ ハスラー
トヨタ シエンタホンダ ヴェゼル

目新しさだけで売れる時代は終わった。

しかし、だからといって販売ランキングの上位に新型車が少数しか入らないのは、近年の商品開発、フルモデルチェンジの方向性、販売方法などが、日本のユーザーニーズから離れていることを意味する。

簡単なことではないが、国内市場を研究し、なおかつ今後の需要を先読みして、発売直後から4~5年後まで安定的に売れる車種を開発して欲しい。そこにセダンやクーペなど趣味性を感じさせる車種が入ればクルマ好きとしては嬉しいが、実用本位でありながらデザイン面などでチャレンジしたクルマも楽しい。

ハスラー、シエンタ、ヴェゼルなどは、巧いところを突いて人気を高めた。このような新型車の登場に期待したい。

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渡辺 陽一郎
筆者渡辺 陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。記事一覧を見る

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監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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