autoc-one.jp 記事・レポート 特集 自動車評論家コラム 増えすぎた「緊急自動ブレーキ」の種類、低価格タイプは廃止すべき理由

自動車評論家コラム 2016/5/17 12:11

増えすぎた「緊急自動ブレーキ」の種類、低価格タイプは廃止すべき理由(1/2)

増えすぎた「緊急自動ブレーキ」の種類、低価格タイプは廃止すべき理由

日本で自動ブレーキが普及したきっかけはスバルの「EyeSight(アイサイト)」

ホンダは横滑り防止装置をいち早く軽自動車全車に標準装備

最近の新車には、衝突不可避の状態に陥ると自動的にブレーキを作動してくれる「緊急自動ブレーキ」を装着できる車種が増えた。自動車にとって最大の欠点は「交通事故」だから、緊急自動ブレーキは積極的に普及させたい。

過去を振り返ると、日本の自動車メーカーは安全意識が低かったと言わざるを得ない。例えば「ESC」などの横滑り防止装置は、国土交通省によって2010年に義務化が発表され、装着が本格化した経緯がある。

しかし緊急自動ブレーキの普及開始は、あくまで自発的である。トラックやバスについては義務化が決定して、現時点では装着すれば減税対象にもなるが(自動車取得税の減税は2017年3月31日/同重量税は2018年4月30日まで)、乗用車は義務化されずとも普及率が高まった。

EyeSight ver2を搭載したスバル レガシィB4

緊急自動ブレーキの装着が促進された背景にあるのは、スバルの「EyeSight(アイサイト)」によるCM効果だろう。5代目レガシィが2010年に「EyeSight ver.2」を10万5,000円という低価格で設定し、「ぶつからないクルマ?」と銘打ってタレントなどを起用したテスト風景の映像をCMに使った。

これが切っ掛けになり、EyeSightに限らず緊急自動ブレーキが注目された。EyeSightは今ではver.3に進化している。そして軽自動車まで含め、すべてのメーカーが緊急自動ブレーキ装着車を用意するようになった。

注意したいのは、緊急自動ブレーキには複数の種類があることだ。大まかな内訳は以下のようになる。

(1)赤外線レーザー方式:

「レーダーブレーキサポート」を搭載したスズキ アルト

緊急自動ブレーキの作動速度は時速30kmが上限。検知できる対象は車両のみで、歩行者は基本的に見分けない。

路上の白線も検知できないから車線逸脱の警報機能もない。つまり簡易型だが価格は安く、軽自動車やコンパクトカーに多く使われる。

スズキ アルトは「レーダーブレーキサポート」を2万1,600円で用意している。

(2)ミリ波レーダー方式:

レーダーブレーキサポートをオプションで用意するレクサス IS

対象が車両であれば、時速100kmを超える速度域でも緊急自動ブレーキが作動する。ただし歩行者は検知できず、車線逸脱の警報機能もない。

ミリ波レーダーを利用して、車間距離を自動制御できるクルーズコントロール(定速走行装置)を組み合わせた車種が多い。この機能を作動させている時は、ドライバーはペダル操作から解放される。

価格はレクサス ISが「プリクラッシュセーフティシステム+レーダークルーズコントロール」を6万4,800円で用意する。

(3)単眼カメラ方式:

エマージェンシーブレーキサポートを採用する日産 ノート

1個のカメラをセンサーとして使う。この方式は少数派だが、日産が「エマージェンシーブレーキサポート」として採用する。

対象物を映像として検知するので、ミリ波レーダーや赤外線レーザーではカバーできない歩行者にも反応する。

作動速度の上限は時速80km。高速道路では不十分で、車間距離を自動制御するクルーズコントロールも装着されないが、日産 ノートに採用されたエマージェンシーブレーキサポートの価格は3万8,800円に収まる。

(4)ステレオカメラ方式:

EyeSight ver.2
アイサイト ver3を搭載するスバル インプレッサスポーツHVデュアルカメラブレーキサポートを装着するスズキ ソリオ

2個のカメラを使い、ミリ波レーダーと同様、高速域でも先行車との距離を測定できる。従って緊急自動ブレーキが高速道路などでも作動する。

歩行者にも反応して、路上の白線を検知できるから車線逸脱の警報も可能だ。

価格はスズキ ソリオが装着する「デュアルカメラブレーキサポート」が5万9400円。

車間距離を自動制御できるクルーズコントロールなどを備えた高機能なスバルの「EyeSight ver.3(アイサイト バージョン3)」は、スバル インプレッサの場合で10万8,000円。

(5)複合方式:

スマートアシストIIを搭載するダイハツ ムーヴ

最近は複数のセンサーを備えるタイプが増えた。最も多いのは、ミリ波レーダーや赤外線レーザーに単眼カメラを組み合わせた方式だ。単眼カメラを使うことで、路上の白線や車種によっては歩行者の検知が可能になる。赤外線レーザーに比べると、緊急自動ブレーキが作動する上限速度も高まる。

ダイハツの軽自動車やコンパクトカーが採用する「スマートアシストII」は赤外線レーザー+単眼カメラ方式だ。

歩行者の検知(時速50km以下で警報のみを行う)、車線逸脱警報、緊急自動ブレーキ(警報は時速100km以下/自動ブレーキの作動は時速50km以下)を可能にした。

ダイハツ ムーヴの価格は6万4,800円だ。

Toyota Safety Sense Cを搭載するトヨタ カローラアクシオ

トヨタは、従来のプリクラッシュセーフティシステムに代わる新世代の安全装備として、2種類の複合方式を採用する。「Toyota Safety Sense C(トヨタセーフティセンスC)」は「赤外線レーザー+単眼カメラ」方式。

対象が車両の場合、衝突の危険が迫った時の警報は時速100kmを超える速度域でも作動する。緊急自動ブレーキは時速80kmが上限で、車線逸脱の警報も行う。ただし歩行者の検知はできない。

価格はトヨタカローラアクシオの場合で5万4,000円だ。

Toyota Safety Sense Pを搭載するトヨタ プリウス

「Toyota Safety Sense P(トヨタセーフティセンスP)」は上級タイプで「ミリ波レーダー+単眼カメラ」方式。

ミリ波レーダーだから緊急自動ブレーキが車両を対象に作動する上限速度が時速100km以上に高まる。

Toyota Safety Sense Cの単眼カメラと違って歩行者検知も可能で、この時の作動上限は時速80kmだ。車線逸脱の警報も行う。さらにミリ波レーダーを使うから、全車速追従型のレーダークルーズコントロールも備わる。

価格はプリウスの場合で8万6400円だ。

Honda SENSINGを搭載するホンダ ステップワゴン

ホンダがステップワゴンやヴェゼルに採用している「Honda SENSING(ホンダセンシング)」も、ミリ波レーダーと単眼カメラを使う。

以上が緊急自動ブレーキの概要になる。ほかのメーカーもそれぞれ独自の機能を採用するが、おおむね上記のどれかに含まれる。

また、車種によってはドライバーの死角となる「斜め後方」の並走車両を検知する機能も採用。例えば2車線道路で、並走車両に気付かずに車線変更してしまい衝突する危険などを防ぐ。

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