アイルトン・セナ、ミハエル・シューマッハに続く逸材が日本のレースに登場!(2/2)
- 筆者: 山口 正己
- カメラマン:STINGER/本田技研工業
日本のレースは所謂『職人技』を競う舞台!?
さて、そのバンドーンが全日本スーパーフォーミュラ選手権で3位になったのだが、そんな実績を持つF1ドライバーなら、当然じゃないの?と思うだろう。しかし日本は特殊な事情があるのだ。
日本のレースは、北から順に挙げると、スポーツランド菅生、ツインリンクもてぎ、富士スピードウェイ、鈴鹿サーキット、岡山国際サーキット、オートポリスの6個所だけを転戦する。それに対して、例えば今年のF1は21個所のコースを転戦する。これは大きな違いだ。
スーパーフォーミュラは、ヨーロッパで行なわれるGP2と同じくF1直下のカテゴリーで、マシンの性能もGP2とほぼ同じと考えていいが、数多くのサーキットを転戦する、というところがスーパーフォーミュラと大きく違う。GP2は、F1のヨーロッパラウンドと呼ばれるヨーロッパで開催されるグランプリのサポートレースとして行なわれ、F1と同じコースで開催される。つまり、サーキットに短時間で慣れる適応力がモノを言うわけだ。
逆に、6個所に限定されたサーキットを回る日本の場合、ドライバーやチームが、たっぷりとデータと経験を蓄積し、その結果、日本のレースは所謂『職人技』を競う舞台になっている。いかに適応力が高いドライバーでも、データと経験に裏打ちされた“職人”の中で勝ち抜くのは簡単ではない、ということになる。
例えば、あの、才能の固まりと言われる小林可夢偉にしても、去年からスーパーフォーミュラに参戦したが、初年度は優勝もポールポジションもなかった。2戦目に2位に食い込んだが、それがシーズン最高の成績だった。バンドーンは、そういう環境のレースで、いきなり予選4番手、決勝3位という成績を示したのだ。
バンドーンと去年チームメイトだった松下信治も注目
今年から、タイヤがブリヂストンからヨコハマの1社供給に変わり、タイヤの性格が大幅に変化した。それが“職人”たちにとって、データの蓄積がない、ということになり、そこがバンドーンに有利に作用した、という解釈もできる。しかし、それも含めて、バンドーンは“持っている”男ということだ。
去年、バンドーンのチームメイトだった松下信治は、バンドーンをべた褒めした。
「とにかく集中力が凄い。レースを含めてミスをすることはまずなくて、一発も速い。そしてチャンピオンを取ったのに、そういうところをちっとも鼻にかけないところがまた凄い。1年間チームメイトとして一緒にレースをして、吸収できるところがたくさんありました。それに、ストフェルはシーズン中にまったく遊ばない。いつもレースのことだけを考えている。レースに全力投球なんです」。
さて、そのチームメイトだった松下信治も注目の逸材である。全日本F3チャンピオンからパリに拠点を置いて、去年GP2にデビューした。優勝も経験し、バンドーンから吸収したものを脳裏にたたき込んで、2年目を迎えるGP2。今年は、5月15日のスペインGPの並催レースが開幕戦になる。
松下信治が乗るマクラーレンのジュニア・チームであるARTは、マクラーレン・ホンダと同じカラーリング。日本流がヨーロッパで通用するかどうか。今度は松下信治が証明する番だ。
もしも、ホンダがマクラーレンの他のもう1チームにエンジンを供給すれば、真っ先に声がかかるのが松下信治である。この名前も覚えておいて損はない。
[Text:山口正己]
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