最近のミニバンは総じてシャシー性能が上がり、操縦安定性が高くなった。トランパスが誕生した1995年頃のミニバンに比べると、そこには雲泥の違いがある。
しかし、その一方でミニバンも世代を重ねるごとにボディの大型化や装備の充実化が進み、さらにはハイブリッド化などで車両重量は嵩み続け、タイヤへの負担も昔とは比べ物にならないほど大きくなった。大きくて重く、重心が高いミニバンの物理的な問題点はより深刻さを増したといえる。
そこでトーヨータイヤはトランパスの最大の特徴であり武器でもある「ミニバンでもふらつきのない安心で快適な乗り味」をさらに進化させる必要に迫られた。
”原点のzero”と”究極のZ”の意味を込めて名付けられた「mpZ」は、設計をゼロから見直すフルモデルチェンジを実施。構造設計ではタイヤの接地面積を限界まで広げた「ワイドトレッド化」を実現し、タイヤ幅の中で路面に接地する面積を広げて安定感を確保した。
内部構造では、タイヤ側面の剛性を高めて不要なたわみや横方向への重心移動を抑える「スーパーハイターンアップ構造」を採用。カーカスの巻き上げ部分をトレッド付近まで延長してサイドウォールの剛性を確保することで、高速道路でのレーンチェンジなどで発生する横方向へのふらつきを抑え、持ち前の「しっかり感」をさらに高めている。
このトレッドパターンは初代トランパスから続く伝統の非対称デザインをベースに、縦溝を太い3本溝として排水性を考慮し、同時にアウト側のリブを大きくとった「高剛性リブ化」によって、背の高いミニバンで起こりやすい偏摩耗を抑えて摩耗ライフも向上。摩耗ライフは実に27%もの向上を遂げている。サイプには3Dマルチサイプを採用して剛性を高め、コーナリングパワーもアップさせた。
日産セレナハイブリッドに装着したmpZを試乗した飯田裕子氏は、「第一印象は少し固めに思ったが、それがしっかり感に繋がっている。たとえば高速道路の繋ぎ目段差を乗り越える瞬間の縦揺れの収束が素晴らしい!レーンチェンジでの収まり感も純正装着のタイヤよりスッキリ感が増している。クルマがワンランク上質になったとさえ思える足さばきを実感できる。ブレーキペダルを踏み込んだ時の制動感にもスッキリ感が増しており、やはりクルマそのものが変わったかのようだ」と語り、mpZの実力を噛みしめるようにセレナのドライブに没頭した。
mpZの印象を総括すると、「スプーンの液体がハチミツなど粘度の高いものではなく、純水のようにサッと流れ落ちるような気持ち良さが得られるタイヤ」と表現。単に操縦安定性が増しただけではなく、走りの質が良くなったことに感心しきりの様子であった。
帰路では純正装着のタイヤに戻してみたところ、「まるでクルマが少し安っぽくなったみたい……」との感想。あらためてタイヤがクルマの乗り味に与える影響の大きさを実感したという。