【DESIGNER’S ROOM】ホンダ 3代目 新型「フィット」デザイナーインタビュー/本田技術研究所 南俊叙(3/3)
- 筆者: 森口 将之
- カメラマン:本田技研工業
シンプルなフォルムで力強い存在感を放つためのワザとは
AO:全体的に感じるのは、いままでの日本車にありがちだった、線の細さがないことだと思うのですが。
M:ヨーロッパのクルマは、離れているとシンプルに見えるのに、近づいていくと面や線の造形がかなり凝っていて、そのクルマがデザインに託したメッセージがはっきり伝わってきます。そのあたりは参考にしました。日本のクルマは逆に、遠くにあっても無駄な線が多くてゴチャゴチャしているのに、近くに寄って見ると弱いというパターンが多かった。そこを変えたかったのです。グローバルモデルだからこそ、「コンパクトカーだからこの程度」というクオリティの枠を超えたいと考えました。
AO:ボディカラーについてはどうでしょうか。プレゼンテーションの画像を見た限りでは、たくさんの色が用意されているようですが。
M:現在のトレンドでいうと、白、灰、黒のいわゆるモノトーン以外はあまり人気がないようです。でもそれでは良くないと思っていたので、いくつか新色を提案しました。ただしノイズにならない色を目指しました。コンパクトカーというとはっきりした色とイメージすることがありますが、景観を考えれば、うるさく見える色は良くないと思っています。
日本らしさではなく「ホンダらしく」ありたい
AO:インテリアは朝日さんの担当になるわけですが、エクステリアを担当する側から見て、どのように映りましたか。
M:グレードアップを狙っていたのだと思います。シルバーの入れ方は従来のフィットにはなかった手法ですし、ピアノブラックの採用も初めてだったので、デザインを進めている過程では「やり過ぎじゃないか」という声も出たようです。でもエクステリア同様、コンパクトカーという枠にとらわれず、グローバルカーとしてのクオリティを追求したことが、良い結果に結び付いたのではないかと思っています。
AO:今回デザインを手掛けるに当たって、日本車らしさ、日本らしさという部分は意識したのでしょうか。
M:日本車らしさや日本らしさというよりも、ホンダらしさにこだわったつもりです。ホンダのDNAは、創業者の本田宗一郎から連綿と受け継がれてきたものであり、日本らしさとはちょっと違う立ち位置にあるのではないかと考えています。コーポレートデザインのキーワードに「エキサイティング」という言葉を掲げたり、3本の柱の中に「ハイテック」を入れたりしたのは、まさにホンダブランドならではのアプローチではないかと思っています。
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