日本にない日本車 ホンダ CRIDER(凌派)・JADE(傑徳) ~中国・上海モーターショーに見るホンダの世界戦略~/桃田健史(2/2)
- 筆者: 桃田 健史
- カメラマン:桃田健史・本田技研工業
都市部から内陸部へ メーカーが次に狙う中国・巨大マーケット
ホンダが中国市場で狙うひとつ目は、内陸部。
これまでは自動車は、上海、北京/天津、広州など、沿岸部の大都市圏でよく売れてきた。これからは、中国のもっと内陸部の市場掘り起こしが、需要拡大のキーポイントなのだ。
その地域の人々、つまりは、西洋文化への憧れがあるものの、中国本来の「モノの見方」を大切にする人たちが「生まれて初めて買うクルマ」として買いたくなるクルマ。これを日本メーカーが造らなければならない。
一人っ子政策が生んだ「80后(バーリンホー)」を攻略せよ
もう1点は、「80后(バーリンホー)」だ。これは、1980年代以降に生まれた世代を指す。日本語では「后」を「後」と表現する場合もある。
ザックリ言えば、その昔日本でも存在した「新人類」と呼べるような若い世代だ。この世代は、一人っ子が多い。なぜなら、中央政府の「一人っ子政策」の後に生まれたからだ。元来、中国は三世代、四世代が同居する大家族だった。しかし、経済成長と一人っ子政策によって、核家族化が進んだ。
そのなかで「80后」は、過去の中国国民とは趣向性が変わってきたのだ。兄弟がいないため、友達とのつながりが強くなる。また、コンピューター、インターネット、モバイルへの対応能力は先進国の若者世代とほとんど変わらない。とはいえ、中国人としての「モノの見方」はハッキリと持っている。
こうした状況をホンダが、クルマ作りに目一杯盛り込んだのが、「CRIDER」、「JADE」、そして「コンセプトM」なのだ。
ではこの3車、どこのが中国向け、内陸部向け、そして「80后」向けなのか? その最大公約数が「大気(ダーチ)」だ。
実は「大気(ダーチ)」思想が見え隠れする「N BOX」、そして次期オデッセイ・エリシオン
そんなことを考えていて、ふと思った。
「そういえば、日本で流行りのN BOXも、けっこう大気(ダーチ)っぽいなぁ」。
まあ、ホンダが軽自動車「N BOX」そのものを中国で販売することは、まずない。しかし、激戦の日本軽自動車市場で、「スズキ ワゴンR」、「ダイハツ タント」、「ダイハツ ムーヴ」という不動の御三家の強固な壁を崩すためには、強烈な押し出し感が必要だったことは確かだ。
それが結果的に、中国向けデザインとして開発していた各車とつながる「大気(ダーチ)」が応用されたのではないだろうか?
そして、もしも「コンセプトM」が次期「オデッセイ」「エリシオン」ならば、日本でも「大気(ダーチ)」デザインが定着するのかもしれない。
「日本にない日本車」として生まれたはずの、ホンダの「中国専用車」や「中国市場重要視車」たち。だがその影響力はジワジワと、日本市場に及んでくるに違いない。
[レポート:桃田健史]
◎関連記事:
■【上海ショー2013】次期エリシオン・オデッセイ!? ホンダ、市販を前提としたミニバンコンセプトモデルなどを出展[2013年4月22日]
■【上海ショー2013】ホンダ、高級車ブランド「アキュラ」の新型SUVコンセプトを発表~3年後には中国で生産へ~[2013年4月22日]
■ 【速報・北京モーターショー2012】国産車編 VOL.2 画像ギャラリー ホンダ・トヨタ・スズキ編 [2012年4月23日]
この記事にコメントする