【ahead femme×オートックワン】-ahead 1月号- 多彩な使い方を受け止めてくれるフランス生まれのカングー(2/2)
- 筆者:
- カメラマン:長谷川徹 ルノー・ジャポン
装備面では日本車が独壇場かと思いきや、カングーにはフランス車らしい気遣いがある。
たとえばリアシート。一般的には2人なら快適に座れるものの真ん中の3人目はちょっと窮屈になる、ということも多いが、カングーは3人が平等になるよう配慮。リアシートから頭上に手を伸ばすと小物が入れられるオーバーヘッドボックスが備わるが、これも平等に3分割されている。出生率を高める政策を推進するフランスでは子供3人という家庭が多く、移動中に兄弟喧嘩しないようにという配慮だという。
その他、グリップ部分が大きくて握りやすくなっているサイドブレーキは、頻繁に上げ下げする郵便局や宅配のドライバーのことを考えているというリアルでユニークなエピソードもある。現行モデルは乗用車としての性格を強めてはいるが、商用車ユーザーへの配慮も忘れてはいないのだ。そしてそれは意外なところでの評価にも繋がっている。
荷物の出し入れがしやすいようフロアを低く設定したり、使いやすい観音開きのバックドアやスライドサイドドアなどを採用しているが、これが愛犬をドライブに連れていくにはもってこい。愛犬家達の間でも評判で、それを受けてルノーでは荷室と後席を仕切るドッグネットや汚れても洗えるリアシートエプロンなど、ワンちゃん向けのアクセサリーも充実させている。
その他、自転車を積むにも適しているなど、多彩な趣味をサポートするモデルとしても重宝がられている。商用車としてもキチンと造り込まれていることが様々なメリットをもたらしているのだ。こういったところに、フランスの合理主義的な考え方が表れていると言えるだろう。カングーを手に入れると、ライフスタイルが一気に華やぎそうな予感がするのはそのため。道具として使いやすい空間を持っているということも、自動車の大きな価値なのだ。
最後に付け加えておきたいのは、カングーは運転してみると意外と楽しいということ。加速が素早いとか、俊敏なハンドリングを持っているとか、そういったスポーツカー的な楽しみはないが、荷物を積んで走ってもフラフラしないようタフに仕上げられつつも、実にしなやかな乗り心地をみせる絶妙なバランスのサスペンションには、奥深い味わいがある。付き合いが長くなればなるほど、離れがたくなるような不思議な魅力があるのだ。
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