NEXTALK 2012年10月26日

ボッシュ 宗藤謙治インタビュー (4/5)

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メルセデス・ベンツ Eクラス 車種情報

Text :
御堀直嗣
Photo:
佐藤靖彦

ボッシュの強みはどこか?

メルセデス・ベンツ Eクラス

ボッシュの強みはどこか?

宗藤謙治の奮闘の賜物として、日本市場においても徐々にクリーンディーゼルエンジンが根を下ろしつつある。そうしたなか、ボッシュの優位性は、何処にあるのか?

【宗藤謙治】実は、クリーンディーゼルエンジンを実現するためのコモンレールという、軽油を超高圧で蓄圧し、電子制御でバルブを操作し、多段噴射するという発想自体は、かねてよりあったもので、ボッシュの発明ではありません。ただ、海底2万メートルもの水圧に匹敵するような1800~2000bar(バール)という高い圧力を実現できずにいたのです。

実現するためには、高圧で漏れに耐えられる加工精度、また材料が割れずに圧力を保持できる構造といった高度な技術が必要です。

そのうえで、まずコモンレールを実用化したのは日本のデンソーで、商用車用でした。そしてボッシュは、乗用車用として世界で最初にコモンレールの実用化にこぎつけたのです。

乗用車用での世界初が、どのような意味をもつかと言いますと、それは小型化です。

そもそもディーゼルエンジン自体、ガソリンエンジンに比べ2倍近い高圧縮比で、高圧に耐える技術が必要であり、ルドルフ・ディーゼルの発明したディーゼルエンジンを乗用車用として実現したのは、ボッシュです。

コモンレールにおいても、ボッシュは小型化することを重視しました。乗用車で使えるということは、圧倒的な数の多さにもつながります。

こうした技術力の根底をなすのは、ボッシュの独自開発力にあると、宗藤謙治は語る。

【宗藤謙治】ボッシュの強みは、独自に開発し、製造までできる点にあります。自動車部品メーカーでありながら、クルマ全体を見て、将来のクルマやエンジンが要求する性能を自ら考え、その将来構想に応じたさまざまなクルマのシステムや部品を製品化できる、世界で唯一のメーカーだと思います。将来のクルマの研究や試験という点では、コンサルタント会社や研究会社はいくつもありますが、その先進技術を、実際に量産化できるシステムサプライヤーはなかなかありません。

よく「これだけ多くの自動車製品を開発しているボッシュなら、自動車も作れるでしょう」と言われます。では、なぜボッシュは自動車メーカーにならないのでしょう?

それは、自動車メーカーになってしまえば、自分たちのクルマやエンジンしか開発することができなくなるからです。実際、自動車メーカーからボッシュへ転職してくる技術者がいて、彼らに「なぜワザワザ自動車メーカーから転職してくるのか?」と聞くと、「ボッシュにいれば、世界中のエンジンの開発に携わることができる」と答えが返ってきます。

こうしたボッシュの独自性は、ディーゼルエンジンでも発揮されています。ディーゼルエンジンはガソリンエンジンと違って自然着火(圧縮によって燃料自ら燃えはじめる:筆者注)ですから、軽油が燃えだしてから以後の燃焼を制御することはできません。したがって、エンジンの性能や性格を決めるのは、燃料噴射の量とタイミングがすべてです。そして、その技術をもつのがボッシュなのです。

エンジンの味付けは、自動車メーカーの仕事ですが、それを要求通り実現するのはボッシュの技術です。