ダンロップ 新時代のタイヤ作りを密着レポート ~先進技術を求め、本社研究所に突入!!~ 後編(3/3)
- 筆者: 今井 優杏
- カメラマン:オートックワン編集部
“ブーム”から“スタンダード”へ エコタイヤの未来
ダンロップは今、エコタイヤという分野にものすんごく力を入れています。
それはなにもダンロップだけではなく、もちろん他のタイヤメーカーも然り。クルマが最大限にエコに傾く昨今、消費者の目も肥え、すでにエコが“ブーム”から“スタンダード”に変化しつつあることは当然の流れと言えるでしょう。
そんな中でエコタイヤの首位を守るべくダンロップが市販化を進めているのが業界初となる100%石油外天然資源を使ったエコタイヤ。
もともとゴム科植物から採取される樹液を原料としていたタイヤは、耐久性や耐摩耗性を重視することからケミカル(石油由来合成物)の比率が増え、現在、一般的なタイヤではおよそ56%を石油資源に頼った構造になっています(住友ゴム㈱社内比)。
しかし石油資源の枯渇が問題視される今、ダンロップは「資源がなくなってからじゃ遅い!」と、このプロジェクトを2000年から(!)スタート。同社ではすでにエナセーブ97という、その名の通り97%の原料が石油外天然資源からできているタイヤが販売されています(先述のエナセーブES97です)。
そして去る2011年の東京モーターショーで発表されたのが先述の業界初となる100%石油外天然資源のタイヤ。
これでタイヤ素材を100%有機物にし、カーボンニュートラルの考え方からCO2の100%再生を目指すという壮大なプロジェクトです。
プロトタイプはトレッドパターンに100の文字をあしらったショー用モデルでしたが、早くも2013年の市販化を発表し、最後の追い込みの真っ最中。
天然ゴムの改質から合成ゴムと同様の制動距離を実現したり、エナセーブ97に残されたあと3%を実現するためにバイオマスから芳香族化合物(ex、老化防止剤、加硫促進剤)を作ったり、タイヤに欠かせないカーボンブラックはバイオマスを燃焼させ、炭素成分にしてみたり、ともうこれだけで論文が書けちゃうくらいの努力と根性がみっちり詰まった力作です。
これらの新材料開発技術には『4D NANO DESIGN』(フォーディーナノデザイン)という同社の技術がカギを握ります。従来の3D(3次元)に時間軸を加えた4Dで解析・設計する、というものですが、これにはSPring-8といった大型放射光施設とスーパーコンピュータ“京”(けい)を連携させた住友ゴム㈱独自のテクノロジーが採用されています。
SPring-8で素材をナノレベルまで可視化し解析+“京”でさらにナノレベルで素材の特徴をシュミレーション・素材設計できるんです。
これがどんだけ凄いかっていうと、これまで可視できなかった分子レベルから構造を組み立てられることによって、剛性と柔軟性という相反した性能を両立できるようになったとのこと。
すでに発売されているエナセーブ・プレミアムとスタッドレスタイヤであるウインターマックスにもすでにこの『4D NANO DESIGN』が採用されています。いやはや、凄い時代になりました。その証拠に販売価格はここまでの開発費用をかけながらも従来のエナセーブ97と同等に設定したいとこれまた良心的。
さて、ダンロップがこれほどまでにエコタイヤの開発を急ぐのも、この分野で今後トップランカーとなるための強い企業姿勢の表れでしょう。パイオニアとして世界にどこまでアピールしていけるか、今後の真価が問われます。
エコに強い関心がある業界からも注目されそうな、新しい時代のタイヤに会えるのはもうすぐですね!
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