日本にない日本車 トヨタ エティオス ~インドの道で鍛え抜いた!新トヨタ世界戦略の真実~ /桃田健史(1/2)
- 筆者: 桃田 健史
ミッションは5MT。価格は最近のルピー安もあり、日本円換算だとかなり安い。
エティオスのラインアップは4つあるが、廉価版で約71万円、エアバックやABSなどフル装備の最上級版でも約98万円。日本でなら「ミラージュ」やトヨタ「パッソ」よりも安く、商用軽自動車並の激安価格だ。
エティオスは2010年末の発売開始当初から人気が高く、2012年上期でも、総販売台数は4万4675台で、インド市場としては大ヒットを継続中である。
売れる理由を、多くのインド市民たちがこう表現する。
「トヨタは高級車というイメージが強くて手が出せなかったが、エティオスは上級感タップリで、しかも、なんとか手が出せる価格だから」。
トヨタはインドを狙い撃ちして「エティオス」を造り、成功した。
トヨタが「エティオス」を作ったワケとは?
日本人にとっては信じられないが・・・。
これから世界市場で、車はドンドン売れる。自動車産業は成長産業なのだ。
少子高齢化、若者の車離れなど、自動車の未来にとってはネガティブファクターばかりの日本。ところが世界市場全体の状況は、日本とは真逆だ。世界人口は現在の約70億人から、2025年頃に80億人、2045年頃に90億人を突破する。
そのなかで、世界一の人口国になるのがインドだ。現在は約12億人と、トップ中国の14億人に次ぐ2位だが、中国はあと10年程で、1人っ子政策におる高齢化社会が加速。あっという間に、インドが中国を逆転するのだ。つまり、将来的に最も車が売れる可能性がある国、それがインドなのだ。2015年には、日本市場にほど近い、400万台市場になるとの予測がある。
現在のインド市場、シェアの約半分は、最近現地の暴動事件でも話題になったマルチ・スズキだ。スズキは1980年代、多くの自動車メーカーがまだ注目していなかったインドに進出し、現在の地位を確立した。その独占体制に対して、ヒュンダイを筆頭に、VW、GM、フォード、そしてトヨタがチャレンジしている。
トヨタは「エティオス」投入まで、世界戦略車としては、大きく2路線あった。ひとつは、「ヴィッツ(ヤリス)」「カローラ」「カムリ」の定番商品群。もうひとつが、新興国向けのピックアップトラック/SUVのIMV(インターナショナル/イノベーティブ・マルチパーパス・ヴィークル)。だが、インド市場では、そのどちらもが「(最も売れる)ボリュームゾーンに合っていなかった」と、エティオス開発責任者は語っている。
そこで、トヨタは考えた。
世界市場で今後成長が見込める新興国を基盤とした、新世界戦略車を造ろう。その開発現場は、将来の成長が見込め、なおかつ走行条件等の「地域最適化」が極めて難しい、インドにしよう、と。ターゲットは、Bセグメント。ライバルは、ヒュンダイ「i20」、ホンダ「ブリオ」、フォード「フィーゴ」などだ。なお、前出の「ミラージュ」の場合、同じく新興国向けだが、5ドアハッチ車であり、エンジンが1.0リッターと小さいこともあり、BセグメントというよりはAセグメントに近い位置付けだ。
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