日本にない日本車「インフィニティ」(2/2)

日本にない日本車「インフィニティ」
G37 FX50 FX50 現行型「FX」 現行型「FX」 現行型「FX」 現行型「EX」 現行型「EX」 現行型「EX」 現行型「QX」 現行型「QX」 画像ギャラリーはこちら

新インフィニティラインアップの完成

G35クーペ(3代目 2002年~2007年)

アメリカユーザーの心をつかんだ「G35クーペ」。筆者はサンフランシスコ近郊で行われた、北米メディア向け試乗会に参加したが、そのダイナミックなパワー/シャーシバランスに驚いた。「ちょっとやり過ぎでしょうか?」(当時の同車シャーシ開発責任者)と言うほどだった。この「クーペ」もセダン同様に売れた。

さらに「インフィニティ」人気を不動にしたのが、「FX」だ。

現行型「FX」
現行型「EX」現行型「QX」

日産「ムラーノ」で大成功したイタリアンデザインイメージを持つ「クロスオーバー」というカテゴリーに、見事に「FX」がハマったのだ。コンセプトモデルにかなり近い姿の量産車という戦略。これが当たり、中村史郎氏率いる日産・インフィニティデザインチームは、商品企画の面で、見事なV字回復をやってのけたのである。

その後、「セドリック/ グロリア」ベースだった「M」を、「M」ありきの「フーガ」として再生。男性的イメージが強い「FX」に対して、少し小ぶりで(実は)北米女性層へのアピールを狙った「EX」(日本のスカイラインクロスオーバー)が誕生。また、フルサイズSUV日産「アルマーダ」の上級版として「QX」が登場した。

さらに、「G」はVVEL(バルブ作動角・リフト量連続可変システム)エンジン搭載で「G35」から「G37」へ進化した。

こうして、2002年に始まった「新インフィニティ戦略」は、モデルサイクル2周目で強靭な基盤を築いた。そして、当初は北米専用ブランドだった「インフィニティ」に世界各地からの引き合いが相次ぎ、自然増というイメージで販売を伸ばしていった。

しかし、日本では未発売なのだ。どうしてなのか?

ホップ、ステップ、そしてジャンプの時。日本市場参入の可能性も!?

Infiniti IPL Coupe
Infiniti IPL CoupeInfiniti IPL Coupe

「インフィニティ」が日本未発売の理由。それは、「レクサス」の事例があるからだ。2005年8月、レクサスが満を持して日本上陸。当時、「アキュラ」の日本上陸についてホンダ国内営業担当役員は筆者に「実施に向けて最終的な検討中だ」とハッキリ言った。そして当然、同時期にインフィニティの日本上陸も議論されていた。だが、「レクサス」は伸び悩んだ。2008年後半のリーマンショック前まで、販売は当初計画に未達だった。と同時に、ロシア、中国など新興国での高級車需要が急伸。日産としては、今後の市場拡大が望めず、しかもレクサスの事例が示すように「欧州高級車志向と日系高級車志向」が相容れない日本市場への「インフィニティ参入は当面、保留」という方向に動いたといえる。

しかし、日本の「インフィニティ」の正規販売は絶対にない、とは言い切れない。 なぜなら、「インフィニティ」が次世代戦略期に入ったからだ。

2002年の「新インフィニティ戦略」から、モデルサイクルとして3周目に入ろうとしている今、「インフィニティ」は大きくジャンプする。

日産は今年5月22日、「インフィニティ」本部を香港に移転した。これは、「次世代インフィニティ」の幕開けである。日産は中期経営計画「日産パワー88」達成のためにも、「インフィニティ」をさらに強靭体制にするのだ。世界市場での販売計画では、2016年までに現在の3倍を目指すと強気だ。

では、販売量急増はどのようにやるのか?その方策について、以下は筆者のこれまでの取材から見えてきたモノだ。

①販売国の拡大、新興国でのディーラー拡大 ②重要な販売先で専用モデル発売(例:中国の「M25L」) ③モデルの拡充(FFのSUV「JX」、2014年発売のEV等) ④スーパーカー、IPL(インフィニティ・パフォーマンス・ライン:BMWのMスポーツに相当)の本格化

日本市場参入の可能性は、上記の④にあると思う。

今年3月ジュネーブショーで世界お披露目された、レンジエクステンダーのスーパーカー「EMARG-E」今年3月ジュネーブショーで世界お披露目された、レンジエクステンダーのスーパーカー「EMARG-E」

今年3月、ジュネーブショーで世界披露された、レンジエクステンダーのスーパーカー「EMARG-E」。英国政府の次世代車戦略構想のなかで生まれた同車。日本での発売は夢ではない。なぜなら、日系ライバルが続々と出現するからだ。2014年登場確定のアキュラ「次期NSX」のガチンコライバルとなる可能性がある。またレクサスは、先頃のBMWとの提携を受けて「次期LF-A」が生まれる可能性を残した。

また、IPLについて日産・中村史郎常務は「現在はライトチューニングだが、近いうちに、AMGやMのような過激バージョンを出していきたい」と漏らす。

これまでの話をまとめると、日本市場で、北米のような「インフィニティ」ディーラーを建て、「普通のインフィニティ」を売ることは難しいだろう。しかし、セレブ向けのセレクトショップのような雰囲気で、「超高級インフィニティ」が日本上陸することは十分に考えられる。

日系高級ブランドバトル「インフィニティ」が日本で大暴れする姿を、是非見てみたい。

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桃田 健史
筆者桃田 健史

日米を拠点に、欧州、BRICs(新興国)、東南アジアなど世界各地で自動車産業を追う「年間飛行距離が最も長い、日本人自動車ジャーナリスト」。自動車雑誌への各種の連載を持つ他、日経Automotive Technologyで電気自動車など次世代車取材、日本テレビで自動車レース中継番組の解説などを務める。近著「エコカー世界大戦争の勝者は誰だ?」(ダイヤモンド社)。1962年東京生まれ。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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