メルセデス・ベンツ THE WORLD RECORD TOUR 1989-2012 Mr グンター・ホルトルフ氏 インタビュー(2/2)
- 筆者: 吉澤 憲治
- カメラマン:Gunther Holtorf/メルセデス・ベンツ日本/オートックワン編集部
地球20周した人間が言うことは、さすが説得力がある!
こんなにも世界中を移動して、自らの活動を公にしているにも関わらず、そもそも自身のホームページは持たないというホルトルフ氏。その理由を尋ねてみた。
【GH】「インターネットが90年頃からか普及してきたけど、情報と言うものは時に危険にも繋がる。僕の場合は行き先が知られてしまうと危険が伴うんだよ。特に危ない国や地域では命取りになるからね。だからITの情報というものはあると便利だけど、なければないで安全にはたらくこともあるんだ。アナログな情報でも目と耳でしっかりと収集して、PCに頼らない生活を送っているよ。」
なるほど、経験したからこそ言える重みのある言葉だ。
ところで、そんな彼だが、子供の頃から車好きというわけではなかったようだ。
【GH】「子供の頃は家に車がなかったから、触れる機会もなかったね。働き出して最初に買った車が初代ビートル、その後はルフトハンザの社用車を長いこと乗っていて、退職してからこの300GDを買ったんだよ。家にはもう1台、34年目を迎えるEクラスもあるよ。車も老夫婦さ(笑)」
メルセデスを2台も所有しているという彼に、メルセデスの魅力を聞いてみた。
【GH】「僕が思うメルセデスの魅力はふたつあって、ひとつは走れば走るほど、良い意味で他の車とは圧倒的な差が出てくるんだよ。これだけの距離を300GDで走ってきたけど、車としての基本的な耐久性が高いんだ。もちろんパーツの交換や修理はしてきたけど、自ら運転して高速で移動する乗り物としてはやっぱり絶対的な信頼感はあるよ。トラブルにならない秘訣は、故障する前に点検修理しておくことだね。だから僕は400以上のパーツを常備しておくんだ。ちなみにアクセルやギアボックスはオリジナルで改良を加えたりもしたよ。ふたつ目は、メルセデスはどんなに古いパーツでも手に入るという安心感だね。だって第二次世界大戦前のパーツも手に入るんだよ。ドイツ人である僕からしてみたら当然の感じはあるけど、日本人のみなさんなら驚きでしょう。大概の自動車メーカーでは、10数年経ったパーツは手に入らないからね」
地球20周した人間が言うことは、さすが説得力がある。
【GH】「特にGクラスのデフロックは走りながらでも変更可能なところが凄いね。砂漠地帯ではとても高い効果を発揮するよ。世界中にはまだまだ日本みたく綺麗に舗装された道があるところのほうが少ないんだ。断崖絶壁の谷を丸太の橋だけで渡ったときは死ぬかと思ったよ」
もう一度見たい景色は、西湖から見た富士山
そんなホルトルフ氏だが、2年前、これまで旅を共にしてきた最愛のご夫人をガンで亡くされている。
【GH】「今でも彼女とはこうやって一緒に旅しているのさ」
ルームミラーに吊るされた亡きご夫人の写真を我々に見せながら、笑顔で思い出を語ってくれた。
最後に彼へ今後の予定を聞いてみた。
【GH】「次は新潟経由で東北地方に入ってから北海道に行くよ。その後はサハリンへ渡って、目指すはモスクワさ。ここは安全な国日本だから教えてあげるよ(笑)」
このワールドツアーは、2013年にドイツのシュトゥッツガルトがゴールの予定。相棒の300GDはメルセデス・ベンツ ミュージアムに展示されることになっている。 ドイツをスタートして、アフリカ、南米、北米、ユーラシア、そして日本と辿ってきた道中は、自動車での200ヶ国地域走破という観点ですでにギネスにも登録されているという。
彼は最後にこう言った。もう一度行きたいところはアフリカ、もう一度見たい景色はネパールから見たエベレストと、西湖から見た富士山だと。
グンター・ホルトルフ氏は、7月20日、東京を経つ予定だ。
またお会いできることを楽しみにしています。お元気で!
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