【ahead femme×オートックワン】-ahead 5月号- オンナにとってクルマとは
- 筆者:
消えゆくMT車
海辺でスポーツカーを走らせる取材があって、いざ乗ろうとしたらエンジンがかからない。
不審に思ってよくよく見ると、シフトレバーには1から6の数字表記、ペダルはアクセル、ブレーキの隣りにもうひとつ、クラッチペダルがあり、私は茫然としてしまった。それがマニュアル車だということに、最初から気付かなかった自分がショックだった。
スポーツカーと言えばマニュアル車という常識が、いつの間にか薄れている。
年間100台以上のクルマに試乗する私でさえこんなアリサマだから、世間一般では消える寸前だろう。
日本で売っているマニュアル車は全体の2~3%程度(乗用車)にまで減り、自動車教習所では女性が約90%、男性は約60%がAT限定免許を取る時代になっている。私自身、日常的に乗るクルマはATもしくはCVTが好きだ。 その方が安全確認やエコドライブに集中できるし、激しい渋滞や長距離ドライブでは、疲労の度合いが変わる。MTモードやパドルシフトが付いているAT車も多いから、山道などで気が向けばMT気分を楽しめるし、なにも不満はないのである。
ただし、それは私がMT免許を持っていて、かつてはMT車に乗っていたことがあるから、そう思えるのかもしれない。
以前、20代の知人に聞かれたことがあった。「パドルシフトって、何の意味があるんですか?」。彼女はAT限定免許で、普段はクルマに乗らないから、シフトチェンジの必要性とか、面白さとか、そういったものが分からないという。
なるほどと思った。道路状況やエンジンの回転数に合わせて、自分で考えてシフトを変え、それがピタッと決まった時のクリア感や、クルマが思い通りの動きをするという気持ち良さ。それを体感したことがなければ、パドルシフトの意味が分かるはずもない。
この感覚の違いは小さなようで、将来的には決定的に大きな違いになるような恐怖感がある。