“最速を誇るオープン”その誕生にはある「試み」が/ロールス・ロイス ドーン 海外試乗レポート(1/3)

  • 筆者: 西川 淳
  • カメラマン:ロールス・ロイス・モーター・カーズ
“最速を誇るオープン”その誕生にはある「試み」が/ロールス・ロイス ドーン 海外試乗レポート
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イギリス高級車ブランドの「密か」かつ「大胆」な試み

スピリット・オブ・エクスタシー

ロールス・ロイスが密かに――

否、商品として見えるカタチだから実のところは大胆に“イメージチェンジ”を計ろうとしていることを、皆さんはご存知だろうか?

その事実を紐解いてみる前に、ひとつ、読者の皆さんへ質問をしてみたい。

「皆さんは、ロールス・ロイスと聞いて、どんなイメージを思い浮かべますか?どんな人が乗っていると想像するのでしょうか?」

おそらく。

大多数の方が、いかめしいグリルをもつ巨大なリムジンを頭に描かれたはず。そして、そのオーナーはというと、大金持ちには違いないけれどもっと雲の上の存在、たとえば王族や皇室といった特別な人たち、という想像になることだろう。

確かに、ロールス・ロイス車やそのオーナー像は、特に20世紀の後半において、そんなイメージに集約されていったことは間違いない。けれども、最近はかなり違ってきている。

ゴーストに始まり、レイスで成功するブランド顧客の「若返り」

ロールス・ロイス ゴースト シリーズII

BMWによる買収以降、まず蘇った「ファントム」こそ古き良きロールス・ロイスのイメージで、その威風堂々とした巨漢さは、正に自動車界の王様にふさわしい存在であった。

だが、その後に「ゴースト」という“やや小さめ”のサルーンが登場したあたりから少しずつ、ロールス・ロイスのイメージが変わっていく。ゴーストは、これまでのロールスユーザーのみならず、他ブランドの高額サルーンからのステップアップ・ユーザーの獲得も期待されて誕生したからだ。

事実、ゴーストの登場までは3千万円以上のサルーンの選択肢はごく限られており、特別であることを重視するハイエンド・ユーザーたちにとっては、どうにもモノ足りない状況になっていた。ゴーストは、名門ブランドの威力でもってそこに新たな橋頭堡を築くに至る。

ロールス・ロイス レイス

そこからの戦略は、ほとんど急進的でさえあった。

ゴーストのメカニズムを共有する2ドアクーペの「レイス」が登場すると、そのユーザー層はロールス・ロイスが狙った通り、一気に若返っていった。若くして成功したVIPがこぞってレイスのスタイリングに夢中になったのだ。

ロールス・ロイスという、言ってみればウルトラ保守的で伝統的なブランドが、それまでの常識を覆す新鮮なデザインのクルマをリリースするというそのミスマッチな感覚が、若いVIPの感性を大いに刺激した。オーナードリブンカーとしても、その走りのスポーティさが高く評価されることになる。

レイスのユーザー平均年齢は50歳を下回った、と言われている。もはやロールス・ロイスは、ひと握りの金持ちの年寄りが余生を楽しむパートナーではない。若返りは、見事に成功した。

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西川 淳
筆者西川 淳

別名ボンジョルノ西川が示すとおり、大のイタリア好き。乗り手をワクワクさせる、刺激に満ちたクルマが好きなので、自然にイタリア車に接することが多い。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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