ロールスロイス ゴースト ブラック・バッジ 試乗レポート|市場の声を反映し生まれたロールスロイスのドライバーズカー(3/3)
- 筆者: 内田 俊一
- カメラマン:内田 俊一
少し不安の残る高速クルージング
高速道に乗り入れてみると、その静けさは益々際立ってくる。タコメーターがないので、100km/hでの回転数は不明だが、ロードノイズもほとんどせず、エンジン音に至ってはまさに無音。かすかに聞こえる風切り音と、路面の継ぎ目が時々タンタンと聞こえるくらいの静かさだ。ボディ剛性も相当高く、フロアのねじれも一切感じられない素晴らしいものだ。だからこそ、ここまでの静粛性が達成できているのだろう。
その一方、若干気になる点もあった。それはステアリングの軽さだ。街中ではそれほど気にならなかったその軽さとフィールだが、高速においては少々心もとなく感じてしまうのだ。特にフィールの少なさは、ドライバーに不安を与え、気分的には流れをリードしようとは思えなかった。
LOWボタンをセレクトし、ドライバーズカーとして走らせてみると、その加速感は恐ろしいほどだ。もちろん標準でもかなりの加速を得ることができるのだが、よりシフトアップタイミングが遅くなるので、その加速を長く味わうことが出来るのだ。ステアリングも少し重めになることから、高速においては積極的にLOWモードを利用した方がより安心したドライブを楽しめるだろう。
まさに書斎とも呼べる後席
ゴーストはもともとショーファーカーとしても設計されていることから、いくらブラック・バッジとはいえ、試してみて損はないと、しばらく後席に座ってみた。
リアシートもスライドやリクライニングが可能なので、適当に操作してポジションを合わせ、フロントシート背面に格納されているがっしりとしたテーブルにPCを置いて仕事をしてみたのだが、これが結構はかどるのだ。
何よりも“外界”の音がほとんど入ってこず静かに保たれ、さらにカーテンなどでプライバシーを守られた室内は、まさに書斎といってふさわしい場所だった。少し疲れたら中央のアームレストを下ろし、その奥にあるふたを開けると冷蔵庫が出現。残念ながらシャンパンは入っていなかったが、飲み物を冷やしておけば、のどを潤すことも可能だ。
本当のオーナーであれば、ショーファーに運転させ、どこへでも気楽に出かけるのだろう
さて、クルマから外へ降りるとしよう。少し想像してほしいのだが、リアドアは後ろヒンジなので、ドアハンドルを引いてドアを開けながら降りるのが意外とやりにくいのだ。つまりドアを開けつつ、腰をかがめ前に出て、ようやく外に出るという行為が意外と厄介なのだ。
もちろんショーファーが開けてくれるのが一番だが、そうでないときのために、ちょうど乗員の顔のあたりにあるピラーにスイッチが隠されている。それを押すことで、自動でドアが開く仕掛けだ。ただし、閉めるときは自分で閉めなければならないが。
今回800kmほど試乗して、何を一番感じたのか。それは駐車場の不便さだった。さすがにコインパーキングに停めるわけにもいかず、かといってタワーでは入る場所は限られる。そこで、出先ではどこに停めるかを前もって調べてから出かけねばならなかった。
もっともこれは、にわかオーナーだから心配することで、本当のオーナーであれば、そんなことを気にせずに、ショーファーに運転させ、どこへでも気楽に出かけるのだろう。さらに、ウイークエンドはきちんと駐車場が完備されたホテルやレストランに乗り付けるだろうから、いちいち駐車場の心配など無用なのだ。
やはり、にわかオーナーには本当の意味でロールスロイスを味わうことは難しいということだ。嗚呼・・・・。
[レポート:内田俊一/Photo:内田俊一]
ロールスロイス ゴーストブラックバッジ 主要スペック表
ロールスロイス ゴースト ブラックバッジ 主要スペック表 | |
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価格(消費税込) | 37,950,000円 |
全長 | 5,400mm |
全幅(車幅) | 1,950mm |
全高(車高) | 1,550mm |
ホイールベース | 3,295mm |
乗車定員 | 5名 |
エンジン | V型12気筒 ツインターボ |
排気量 | 6,591cc |
最高出力 | 450kW(612PS)/5,250rpm |
最大トルク | 840Nm/1,650-5,000rpm |
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