スバル WRX STI S206 試乗レポート/河口まなぶ(3/3)
- 筆者:
- カメラマン:茂呂幸正
S206はまさに「レーシングカーの公道版」!
そうして走らせていると、ある事を思い出してまた驚く。そう、S206は実に19インチというこのクラスにはトゥーマッチともいっていいほどの大径タイヤを装着しているという事実。
それにも関わらずバネ下の重さや乗り心地の悪化が全く感じられないのは、何気に凄いことなのだ。
これはBBSのホイールがノーマルより1本辺り3.3kgと軽いことに加え、ミシュランのパイロットスーパースポーツが大径タイヤながらもしっかりと「たわむ」優れた構造を採用しているからに他ならない。
そしてこの辺りの味付けはまさに、STIの走りのマイスターである辰巳英治氏のワザがあってこそのものである。
STIは今年、ニュルブルクリンク24時間レースにおいて、インプレッサWRX STIのtSをベースとしたモデルで参加4年目にして見事クラス優勝を果たした。
その時のレーシングカーを造り上げ、レースでは監督を務めたのが辰巳英治氏。
そんな辰巳氏が造り上げた今回のS206は、まさにそのレーシングカーで得たノウハウと技術を、惜しむことなく投入している。
スポーツカーのうたい文句で良く、レーシングカーやコンペティション・フィールドで培った技術とノウハウがフィードバックされる・・・と記されるが、こうした事実を見て行くとS206はそれよりもさらに濃密な関係性があるといえるだろう。
そう、S206はフィードバックというよりレーシングカーを造りレースをマネージメントする監督そのものが手掛けたマシン。まさにメイド・バイ・レースといえるものだし、レーシングカーの公道版といってもいい。
と記すと先のS206の乗り心地の良さをして、レーシングカーがそんなに乗り心地良いの?という疑問を抱く人も多いだろうが、実はレーシングカーとS206の乗り味・走り味は極めて近いところにある。
それについてはレーシングカーを体験させてもらった自動車専門誌「XaCAR」を見てほしいが、これは実に驚きの共通性でもあった。
というわけでS206。速さを極めるとロードカーとしての資質を高めることになる。それを改めて教えられた1台だった。
もっとも、残念ながらこのS206は既に300台が完売しており、オーナーだけがその凄さを味わえる伝説のマシンとなっているのだが。
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