ダイハツ ミライース 試乗レポート／渡辺陽一郎(3/3)

居住性も文句なし！気になる安全性はいかに

安全確保の観点で注目されるのは、最上級グレードのGとGfに、サイドエアバッグと併せて横滑り防止装置のVSCが標準装着されること。ミライースにはアイドリングストップが付くので、登坂路で発進する時の後退防止機能も備わり、ブレーキの増圧制御が組み込まれる。これを活かして横滑り防止装置を装着した。若干コストは高まるが、ほかのグレードでも、せめてオプションで選べるようにしたい。

安全性で気になったのは、全グレードのリアシートにヘッドレストが付かないこと。開発者は「装着を検討している」としており、早期に実現して欲しい。

リアシートのヘッドレストに必要性を感じたのは、ミライースの居住性が意外に高く、リアシートも「補助席」ではないからだ。身長170cmの大人4名が乗車して、リアシートに座る同乗者の膝先空間は握りコブシ2つ少々。頭上の空間は狭めだが、掌が入る程度の余裕はある。前後シートのヒップポイント間隔は930mmだから、一般的なセダンの800～900mmを上まわる。大人が座っても窮屈ではない。

こうなるとダウンサイジングの流れに沿って、ムーヴのような背の高い軽自動車、あるいはコンパクトカーからミライースに代替えするケースもあるだろう。遠方への外出に公共の交通機関を使う世帯なら、ファミリーカーとしての使われ方も想定される。ミライースは高機能だから、リアシートのヘッドレストも省けない。横滑り防止装置と同様、せめてオプションで用意してもらいたい。

リアシートと同様、フロントシートの座り心地にも不満はない。サイズは十分に確保され、低価格の軽自動車の割にはボリューム感が伴う。

インパネも同様。79.5万円のDにもデジタルメーターが備わり、XやGではインパネが一体成形ながら2トーンの色分けになる。リクライニングレバーの内側が未処理になるなど、粗探しをすればコストダウンの形跡を見い出せるが、価格を考えれば質感に不満はない。

 グレードは2WDが4タイプ。4WDが2タイプを設定。2WDで見ると、79.5万円のDは機能の割に安いが、パワードアロックやホイールキャップが付かない。営業車向けと考えたい。89.5万円のＬは前述の2つの装備が備わり、CDオーディオも加わるが、キーレスエントリーシステムや電動格納式ドアミラーが非装着。となれば、売れ筋になるのはこれらを備えた99.5万円のXだ。

もっとも、最上級のGも注目される。価格は112万円でXより12.5万円高いが、横滑り防止装置、アルミホイール、エアコンのオート機能など、18万円相当の装備が加わるからだ。実用的にはXで十分だが、安全＆快適装備を充実させたいならGを選ぶ手もある。

今の軽自動車では背の高い車種が人気だが、ミライースを試乗して、「これで十分」というより「これがピッタリ」と感じた。「安くて低燃費」でありながら、日常的な使用では我慢を強いらないからだ。全高が1500mmだから、立体駐車場が使いやすいこともメリットになる。

そしてダイハツには、今後もミライースの販売促進に力を入れ、存在感を際立たせて欲しい。前述のように今の背の高い軽自動車は、「税金の安いコンパクトカー」と受け取られ、増税を招きかねない状況にあるからだ。

公共の交通機関が未発達な地域では、通勤、買い物、通院といった日常的な移動をクルマに頼らざるを得ない現実がある。その結果、軽自動車の普及率も都市部に比べると大幅に高い。この地域では、クルマは一種のライフライン。軽自動車が増税されれば、クルマの所有が困難になり、日常生活に支障をきたす人達が生じてしまう。

低価格で低燃費、日常的な移動に適したミライースは、ライフラインとしての軽自動車の姿を明確に打ち出す。軽自動車を増税から守る砦でもあるのだ。

ほかのメーカーも、ミライースのような車種に力を入れて欲しい。アルトのような既存の車種をベースに、環境性能を高めても良いだろう。