ポルシェ パナメーラ S ハイブリッド 海外試乗レポート/金子浩久(3/4)

  • 筆者: 金子 浩久
  • カメラマン:ポルシェ・ジャパン
ポルシェ パナメーラ S ハイブリッド 海外試乗レポート/金子浩久
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電気モーターだけで走っても充分な速さです。

ポルシェ パナメーラ S ハイブリッド

スタートしてベルヒテスガルテンの山を下っていく区間は、ほとんどがコースティングモードに入っていた。山道の前方を行くクルマに追いついてフットブレーキを踏んだりすると、パナメーラSハイブリッドはドライバーが減速を必要としているのだと判断して、エンジンを始動し、エンジンブレーキを発動させる。

十分に減速し、コーナーも緩やかになって落ち着いた途端に、エンジンは音もなく止まり、タコメーターの針がストンッと“0”の位置まで落ちる。コースティング状態に入ったのだ。スピードメーター隣のマルチファンクションディスプレイをハンドル上のロータリースイッチでエネルギーモニターに切り替えて確認すると、タイヤのイラストからバッテリーのイラストに矢印が向かっている。充電しているわけだ。

山を下りきり、国境(と言っても、道端に小さな看板が一枚出ているだけだ)を越えてザルツブルグの町に入った。赤信号で停まった途端に、アイドリングストップした。カイエンSハイブリッドでも同じだったが、排気量の大きなクルマのエンジンがアイドリングストップすると、静寂が車内を覆い、メリハリが効く。

信号が青になって、ゆっくりとアクセルペダルを踏み込んでいく。急に踏み込むと、エンジンが始動して、ガソリンを消費してしまう。でも、そんな心配は要らなかった。電気モーターだけで走っても、パナメーラSハイブリッドは十分に速く、街中の交通の流れをリードするのに十分だった。それでも、再び丘陵地帯に入ってペースを上げて行くと、エンジンが始動する。

ポルシェ パナメーラ S ハイブリッド

加速を終え、アクセルペダルを抜くようにして戻すと、すぐにコースティングモードに入る。エンジンが停まるのだが、走行中の風切り音とタイヤの路面との擦過音に掻き消され、エンジンが停止したことは、よほど注意していない限りタコメーターを見なければわからない。

少し長めの登り直線路が出現したので、アクセルペダルを素早く強めに踏み込んでみた。3リッターV6エンジンは鋭く回転を上げ、7速に入っていたティプトロニックSは、6速、5速と2段落ちた。と同時に、モーターが回転に加わっている様子がエネルギーモニターに示されている。エンジンとモーターからの2本の矢印が、同時にタイヤの方を向いている。

パナメーラSハイブリッドは、トランスミッションがキックダウンしてギアを落とした時と、スポーツモードでアクセルペダルを85%以上踏み込んでいる時にエンジンとモーターが同時にタイヤを駆動させる設計となっている。乗り心地が重厚で穏やかなのは、パナメーラ・シリーズすべてに共通する美点だ。

少しの登り勾配があっても、コースティング状態には入る。そして、コースティング中にパドルでシフトダウンしても少しのブレーキが効いていく。エンジンは停まって切り離されているから、モーターの回転抵抗がシフトダウンによって増し、それがブレーキとなっているのだ。

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金子 浩久
筆者金子 浩久

モータリングライター 1961年東京生まれ。 自動車と自動車に関わる人間について執筆活動を行う。主な著書に、『10年10万キロストーリー』(1~4)、『セナと日本人』、『地球自動車旅行』、『ニッポン・ミニ・ストーリー』、『レクサスのジレンマ』、『力説自動車』など。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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