日産 エルグランド 試乗レポート/小沢コージ(4/4)
- 筆者: 小沢 コージ
居住性は寸法じゃない、間取りだ!
話は変わるが、家の住み良さは寸法では計れないという話がある。もちろん、絶対的な広さもある程度は必要だが、広ければ広いほど便利と考えるのは早計だ。
それはクルマにもいえる。一部の広い軽自動車が証明しているが、余ったスペースに無駄に荷物を置いてしまうとか、子供が遊んで困るというケースもある。
もちろん、それも1つの魅力だが、それが“真の上質”かと言えば疑問だろう。
同じ事はミニバンにも当てはまると思う。分かりやすいのはシートアレンジで、今までのミニバンはカタログ上見栄えのする3列全フルフラット化を尊重しすぎて、シート単体を小型化する傾向があった。
特に顕著なのは3列目で、旧型エルグランドにしろ、フルフラット化のために跳ね上げ式になっており、その分、シートサイズが小さいだけでなく、クッションが薄かったり、腰の当たる部分が複雑なジョイント機構のために狭くなったりしていた。
つまり、ある種“見栄えの効く広さ”の為に“普段大切な上質”を犠牲にしていたのだ。しかし、ミニバンが広まって約20年は経とうという日本自動車界。ついにそこの疑問というか、無駄に気づいたということなのだ。
口当たりのいい“量”ではなく、長く乗ると本当に実感できる“質”向上のためにその巨大な空間を割いた。実は、新型エルグランドで最も見るべきなのは、そのコンセプトチェンジだと思う。
言わばそれは、家に帰らない高度成長期の猛烈お父さんが、今やマイホームパパになり、家族とゆっくり過ごす時間を取る・・・ある種のスローライフ的なチェンジだ。
一見、日本的でバブリーこの上ない新型エルグランドだが、その裏にはそういう“量より質”の転換が計られている。この変化を見逃してはならないと私は思う。
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