ロータス 新型エリーゼ 海外試乗レポート(3/3)
- 筆者: 桂 伸一
「こんなスポーツカーが欲しかった」と思わせてくれる
アイルトン・セナや、往年のジム・クラーク、グラハム・ヒルらF1ドライバーたちがマシン開発に使った「ヘセル・テストトラック」はまさにロータスの聖地だ。
今回はその聖地を、エリーゼで思う存分“全開走行”出来る機会が得られた。
もちろん一般道での試乗も行われたが、何しろ時期は「バカンスシーズン」。のんびりと走る老夫婦達のペースについて行くのでは、エリーゼの本当の良さを引き出すことが出来ない。
実は当日、バハールCEOへのインタビューが予定されていたのだが、急遽アメリカに飛ぶことになり中止。時間に大幅な余裕ができたから「これ幸い」とエリーゼを走らせまくった。
「ハンドリング by ロータス」の味を決める新しい顔は、マシュー・ベッカー。
曰く、新しいボディは空気抵抗を4%低減することができ、車重はパワーユニットが15kg増加した。サスペンションを含む走行性能を見直す必要があると思い、8週間かけて、様々なテストを行ったが「これがいい組み合わせだ」と思った仕様は、結局従来からの仕様だった。
だからサスペンションの仕様もタイヤもすべて従来と変わらない。
矢のように進む直進性から、手を添えていればいいだけの安定感。ステア操作すると、軽いフロントはスッと舵角する方向へと吸い込まれ、接地感の高いリヤは駆動力を前へ前へと安定して伝える。
そのバランス感覚がライトウェイトスポーツならではのフットワークだ。
タイヤからスキール音が聞こえるグリップの限界付近では、フロントがわずかに外にはらむ弱アンダーステアで安定方向に逃がすから安全。
一方で、トラクションコントロールのスイッチをOFFにするような“腕達者”向けには、コーナー進入と同時にアクセルを全閉すると、リヤが外にスライドしフロントが内側へと巻き込む“タックイン”を誘発する。
いわゆるドリフトの誘発からカウンターステアを当てる状況だが、その動きは「最も軽快な動き」といわれた初代エリーゼを彷彿とさせる。
スライドするリヤに対して、カウンターステアはステアリングが自然と進行方向を向くから、その方向に手を差し伸べて素早く切り込めばいい。
と同時にアクセルを踏み込んで駆動力を高める事で、姿勢はもとに戻りやすくなる。
僅か1.6リッターのエンジンでも、これほどのスポーツドライビングが楽しめるクルマがエリーゼであり、ロータスの魅力だ。
イギリス製の高性能なシャシーに、イタリアンデザインのスタイリッシュなボディを被せ、極めて信頼性の高い日本製のパワーユニットを搭載する。
こんなスポーツカーが欲しかった、と思えるエリーゼがついに完成した。
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