トヨタ ヴィッツ 試乗レポート

  • 筆者: 松下 宏
  • カメラマン:原田淳
トヨタ ヴィッツ 試乗レポート
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ライバルに対して先手を打とうという意欲

現在ではヴィッツの下にパッソが設定されているが、そもそもトヨタのエントリーモデルとして作られたのがヴィッツ。それも国内で販売するだけでなく、世界市場をマーケットに開発されたクルマで、ヨーロッパではヤリスとして、アメリカでもセダン版(日本ではベルタ)が販売される。ワールドカーだ。

日本では2代目モデルの発売から2年半ほど経過し、初めてのマイナーチェンジが行われた。先にデミオがフルモデルチェンジを受け、さらに近くフィットが登場してくるという絶妙のタイミングでのマイナーチェンジだ。特に強力なライバル車であるフィットに対して先手を打とうという意欲が伝わってくる。

今回の改良のポイントは、前後のデザインに手を加えたほか、イストから始まったSRSサイド&カーテンシールドエアバッグの標準装備化がヴィッツにも適用されたこと、RSのCVT車にパドルシフトを設定し、1.3Lエンジンの搭載車も設定したこと、一部グレードに1年を通して使える快適温熱シートを設定したことなどだ。

新色も加わり、見た目も装備も充実

外観デザインの変更はまず前後のバンパーやフロントグリル、前後のコンビネーションランプの変更といったマイナーチェンジでの一般的な変更が基本。同時に、ターンランプ付きのドアミラーが全車に標準装備された。坂道でハンドルを切った状態で停車したときなど、状況によってはヘッドランプの光の中にターンランプが隠れてしまうこともあるので、ターンランプが独立してドアミラーに装着されるのは良いことだ。

ボディカラーは新しく4色が追加され、合計で15色の豊富なバリエーションとなった。グレードによる専用色もあるので、全グレードで15色が選べるわけではないが、売れ筋グレードのFやUでは11色のボディカラーと2色のインテリアカラーが選べる設定だ。また一部の内装パーツの色をグレードに応じた設定とし、個性を際立たせている。

装備で注目されるのは快適温熱シート。人間工学に基づいてヒーターの配置と温度分布を見直すことで、冬場の寒い日だけでなく夏場の冷房使用時にも体の冷え過ぎを防ぐことが可能。1年を通じて使えるヒーター付きのシートで、I'LLとUに設定されている。

インテリジェントパッケージにアイドルストップ機構、 RSにパドルシフトを設定

マイナーチェンジでは基本メカニズムが変更されていないので、走りのフィールは基本的に従来と変わらないものだ。最初に試乗したのは1.0Fのインテリジェントパッケージ装着車で、アイドルストップ機構を備えたモデル。停車時にエンジンが停止して静かな室内が生まれる。アイドルストップは燃費向上に効果があり、フィットを上回る24.5km/Lの低燃費を実現しているから、このパッケージには値打ちがある。ブレーキペダルから足を離すか、アクセルペダルを踏み込むとすぐにエンジンが始動する。始動時には一定のショックがあるが、ほとんど気にならないレベルだ。

次に試乗したRSでは、パドルシフトによる操作性の向上がポイント。ステアリングの裏側のパドルを操作することで、ハンドルから手を離さずにシフトチェンジが可能。ただ、高速コーナーでは良いが、ワインディングなどで大きく舵を切ったときにはパドルの位置が分からなくなるのは難点。パドルが動くのが良いか、固定式が良いかは議論のあるところだろう。

最後に試乗したI'LLでは快適温熱シートを確認することができた。スイッチを入れるとすぐにシートが温まるのを感じるが、運転しているうちに温熱シートの存在を忘れてしまう。自然な形で温かくなるので意識しなくなるのだ。それだけ具合の良いシートであることが証明されている。

成長したが、安全装備にはさらに期待。

8月の新車登録台数を見ると、ヴィッツはわずか3台の差でカローラに次ぐ2位だった。マイナーチェンジ直前にこの数字だったということは、チェンジを受けた後の9月あるいは10月にはカローラを上回って首位の座を確保する可能性も高い。さらに10月にフィットが登場した後で、本格的な販売合戦が始まることになる。

今回のマイナーチェンジで魅力アップを図ったヴィッツだが、1.0Uが130万円台、1.3Uだと140万円台という価格設定。快適温熱シートが欲しい人はUを選ぶしかないが、価格はやや高めの印象。これまでは販売力の強さで良く売れてきたが、今後はフィットが新型に切り替わるだけに厳しい販売合戦が展開されることになるだろう。

SRSサイド&カーテンシールドエアバッグを標準装備化したのは大きなニュースだが、それなら同時に後席中央の3点式シートベルトとヘッドレストも装備して欲しかった。安全装備の基本は3点式シートベルトであり、3点式シートベルトがあってこそのSRSエアバッグである。欧州仕様には用意される3点式シートベルトが国内仕様では2点式に変わり、ヘッドレストもなくなるのでは画竜点睛を欠いている。

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松下 宏
筆者松下 宏

自動車そのものはもとよりクルマに関連する経済的な話題に詳しい自動車評論家。新車、中古車を含めてユーザーサイドに立った的確な購入アドバイスを語ることで定評がある。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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