“役付き”ポルシェの最高峰「911 GT3 RS」「ケイマン GT4」試乗レポート(5/5)
- 筆者： 嶋田 智之
- カメラマン：阿部昌也・ポルシェジャパン
ワインディングで愉しむなら、コイツがNo.1かもしれない
何より、ハンドリングが抜群に素晴らしい。ヒラリとした軽快な身のこなしはGTSまでのモデルに較べて少しマイルドな気もするけれど、それはめくるめくコーナリングスピードで相殺。しっかりしたタイヤの接地感とグッと踏ん張ってくれる４つの足が通常のケイマン以上に自信を持ってコーナーに飛び込んでいくのを許してくれるし、狙ったラインの上にピタリと載せられて、そこから先を見事なオン・ザ・レール感覚でスパッと抜けていけることの気持ちよさ。仮に少しミスしてリアタイヤを滑らせてしまったとしても、そのときの動きはGT3 RSみたいにクルマの状態をハッキリと伝えてくれるから、その後のコントロールもしやすい。弾け飛んでしまいそうな危うい感じもない。慣れればクルマをどんなふうにでもコントロールして走れそうな、そんな自在感があるのだ。そのフィールの濃さとそのときのスピード領域も、明らかに通常のケイマンより上にある。奥行きも深そうだからサーキットに持ち込めばまた違う楽しさを与えてくれるのかも知れないけれど、ワインディングロードで走る限り、もしかしたらポルシェの中でこれが一番楽しめるクルマかも知れない、と感じたのも事実だ。ケイマンGT4は、それくらい楽しく気持ちよかったのだ。
強烈なインパクトを与える2台
今回の2台のスペシャル・ポルシェは、どちらも基本的にはサーキットユースをハッキリと意識したモデルである。モータースポーツ色の色濃いロードゴーイング911としての速さを徹底追求した、911GT3 RS。スポーツカーとしての素性のよさとミドシップレイアウトの楽しさをサーキットに向けて適正化したような、ケイマンGT4。あえていうなら、GT3 RSはその速さで、GT4はその楽しさで、ドライバーを狂わせてしまうようなところがある。どちらのモデルも、インパクトは相当に強烈だった。
価格を見ると、911GT3 RSは2530万円。これは間違いなく高額ではあるけれど、妥協なしのクルマの作り込みやそれが生み出すパフォーマンスを考えると、極めて順当であるように思えてくる。そしてケイマンGT4は1064万円。これだけ走りの総合力が高くなっていて、それでGTSの149万円高に過ぎないことを考えると、むしろバーゲンプライスにすら感じられる。
ポルシェは本来、標準的なモデルですら充分に速くて楽しいのにも関わらず、それぞれに豊富なヴァリエーションを取り揃えてるから、実際に購入を本気で考える人はかなり悩むことになるという側面を持っている。これでまた悩みの幅が大きく広がったわけだ。本気で悩むことができる立場に全く達していない自分に、ホッとするやら悔しいやら……。僕ももっと頑張らねば！
[レポート：嶋田智之]
「Porsche 911 GT3 RS」 主要諸元
全長x全幅x全高：4545x1880x1291mm／ホイールベース：2457mm／車両重量(DIN)：1420kg／エンジン種類：水平対向6気筒 DOHC 24V 直噴 ガソリンエンジン／総排気量：3996cc／最高出力：500ps(368kW)/8250rpm／最大トルク：460N･m/6250rpm／リッターあたりの出力：125ps(92.1kW)/L／最高速度：310km/h／0-100km/h加速：3.3秒／0-200km/h加速：10.9秒／0-400m加速：11.2秒／トランスミッション：専用7速PDK(ポルシェ・ドッペルクップルング：デュアルクラッチトランスミッション)／サスペンション：(前)マクファーソンストラット式(後)マルチリンク式／タイヤサイズ：(前)265/35ZR20(後)325/30ZR21／メーカー希望小売価格：25,300,000円[消費税込]
「Porsche Cayman GT4」 主要諸元
全長x全幅x全高：4438x1817x1266mm／ホイールベース：2484mm／車両重量(DIN)：1340kg／駆動方式：MR(リアエンジン・リア駆動)／エンジン種類：水平対向6気筒 DOHC 24V 直噴 ガソリンエンジン／総排気量：3800cc／最高出力：385ps(283kW)/7400rpm／最大トルク：420N･m/4750-6000rpm／リッターあたりの出力：101.3ps(74.5kW)/L／最高速度：295km/h／0-100km/h加速：4.4秒／0-200km/h加速：14.5秒／0-400m加速：12.5秒／トランスミッション：6速MT(マニュアルトランスミッション)／サスペンション：(前)マクファーソンストラット式(後)マクファーソンストラット式／タイヤサイズ：(前)245/35ZR20(後)295/30ZR20／メーカー希望小売価格：10,640,000円[消費税込]
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本人いわく「ヤミ鍋系」のエンスー自動車雑誌、『Tipo』の編集長を長く務め、スーパーカー専門誌『ROSSO』の総編集長を担当した後、フリーランスとして独立。2011年からクルマとヒトに照準を絞った「モノ書き兼エディター」として活動中。自動車イベントではトークのゲストとして声が掛かることも多い。世界各国のスポーツカーやヒストリックカー、新旧スーパーカー、世界に数台の歴史的な名車や1000PSオーバーのチューニングカーなどを筆頭に、ステアリングを握ったクルマの種類は業界でもトップクラス。過去の経歴から速いクルマばかりを好むと見られがちだが、その実はステアリングと４つのタイヤさえあるならどんなクルマでも楽しめてしまう自動車博愛主義者でもある。1964年生まれ。記事一覧を見る
自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。
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