【試乗】スバル「BRZ tS」STIコンプリートカー第二弾(D型・2015年モデル) 速攻レポート/マリオ高野(3/5)
- 筆者: マリオ 高野
- カメラマン:島村栄二
ミシュラン・スーパースポーツの性能をとことん味わい尽せるアシの設定
タイヤは、STI車では「WRX S206」から採用が始まったミシュランのスーパースポーツ。S206では「タイヤに負けてない」、前作2013年式のBRZ tSでは「タイヤを履きこなせている」と、印象面でも徐々に進化してきましたが、新型BRZ tSでは「タイヤの性能を使い切ってる感」を強く実感。執念深い貧乏性により、これだけタイヤのグリップ感が上がると高価なミシュランの減りが早くなるのでは!? などと心配してしまいますが、クルマの接地感が良くなると編摩耗しなくなるなど摩耗も均一に進むので、ライフ面ではむしろ好ましい状況になるようです。
今回ワタシが試乗したのは試乗会の最終日。腕利きのセンセイ方がガンガン走られた後だったにも関わらず、どの試乗車もタイヤは奇麗な減り方をしていました。
オトナのムードを取るか、SUPER GTの勇姿を再現するか・・・ああ悩ましい!
なお、新型「BRZ tS」では前作に設定されたGTパッケージはなくなり、大型のGTウイングは装備されなくなりました。しかし、あの大型GTウイングはパーツ単体ではまだ購入可能なので、高速域でのリアのダウンフォースがもっとほしい人、またはスーパーGTでの勇姿をビジュアル的に近づけたい人は後付けできます。GTウイングを装着すると理論的にはアンダー傾向が強まりますが、前述した快楽が損なわれるほどではないとのことです。GTウイングを付ける際はフロントのリップスポイラーも同時に装着するとバランスが良くなるでしょう。
GTウイングについては、オトナが街で乗るには派手すぎる気がしますが、その一方でサーキット走行時の性能やGTレースカーのイメージ追求のためには付けたいので、個人的には悩ましいところです。
”ボディのヒステリシスの低減”とは、何ぞや
今回の新型BRZ tSでは、最近のSTIコンプリートカー作りの大きなテーマのひとつである〝ボディのヒステリシスの低減〟をはかることによって得られる効果の大きさをあらためて実感しました。
クルマのボディにみられるヒステリシスとは、簡単、かつ乱暴にイメージするとパーツ同士の接合部分などにある微細なミクロのガタ(実際にガタガタしているわけではない)のようなもので、クルマのように複数の鉄板をつなぎ合わせたり、複雑な曲面をもつ構造体ではどうしても出てしまうものですが、BRZ tSではフレキシブルドロースティフナーなどで1台ずつ個体差に合わせたテンションをかけることによってそれを低減。同様のパーツはまだ他ではみられないので、現状ではまだSTI独自のボディ補剛論理といえるでしょう。
昔ながらのつっかえ棒のようなタワーバーではガッシリ感は出せてもヒステリシスはむしろ増えるため、ある領域から唐突な動きをするような挙動が出てしまいますが、STIの「フレキシブル」系のパーツで補剛されると、挙動の推移や限界がわかりやすいクルマに仕上がります。
ビルシュタインダンパーの採用で、しなやかさと上質感が高まった
続いて、前作2013年式のBRZ tSからグレードアップされたポイントはビルシュタインダンパーの採用です。ビルシュタインダンパーは、伸び縮みの応答が速いおかげで減衰力を下げてもちゃんとダンピングをするので、前作2013年式のBRZ tSのダンパーと比べると、減衰力が強くなってるのはフロントの伸び側のみ。あとは減衰力を落として足がスムースに動きやすくなっています。
これでよりしなやかな乗り心地が得られるようになりましたが、今回のビル足の効果がもっとも顕著なのは高速域でのピッチングの低減にある気がしました。個人的に、高速域で多少ピッチングが出るのはスポーツカーなら当然と思っていましたが、やはり、ピッチングが減ると乗り味の上質感がグッと増します。
また、足がしなやかに動くせいでロール量が大きくなったと錯覚しましたが、ロール量は前作2013年式のBRZ tSと変わっていません。ちなみに、スプリングレートは前作からの踏襲です(ノーマル比10mmローダウン)。
[スーパースポーツなのに、1日1000kmのロングドライブもイケる理由とは・・・次ページへ続く]
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