シトロエン C4カクタス 海外試乗レポート/森口将之(2/2)
- 筆者: 森口 将之
シトロエン伝統の空間作り
C4カクタスの後席は前席に比べるとやや固めなれど、広さは身長170㎝の僕にとっては十分。ガラスルーフ標準装備だから寸法以上の解放感もある。両端がホイールハウスに蹴られていないので3人掛けもできそう。本国仕様で4157×1729×1480㎜と、「C4」より小柄なボディに対し、ホイールベースはそれと同等の2595㎜を確保したおかげだ。シトロエン伝統の空間作りが生きていたのである。
しかもこのボディは軽い。ベースモデルでは965㎏とC4よりなんと200㎏も軽く、1トン切りを実現している。高張力鋼板やアルミを使っただけでなく、C4を名乗りながらプラットフォームはC3のストレッチ版とし、リアドアの窓は外開きとして、後席の左右分割を止めるなど、工夫を凝らした作りの成果だ。もちろんこの軽さは走りにも効いている。加速だけでなく、乗り心地にも。
あの「2CV」に近いクルマ作りの考え方
試乗会ではガソリン1.2リッター3気筒ターボがMT、ディーゼル1.6リッター4気筒ターボが2ペダルのETG(エフィシェント・トロニック・ギアボックス)というパワートレインを試したけれど、110ps/20.9㎏mのガソリンでも軽快に加速するのは、ひとえにこの軽さのおかげ。もちろん力強さではディーゼルが上で、加えて1㎞あたりCO2排出量は82gにすぎないから、ヨーロッパではこちらが主力だろう。ETGのスムーズな変速も印象に残った。トルクの余裕が段付きを少なくしているのかもしれない。
それよりもなによりも乗り心地だ。プラットフォームを共有するC3のマイルド感に、ロングホイールベースの穏やかさをトッピングした感じで、とくに高速道路でうねりをいなす際のゆったりしたしぐさは、かつてのハイドロニューマティックを思わせるほど。
そのわりにコーナーでは、C3がそうであるようにロールを抑えてくれ、ノーズの動きも軽快だけれど、その後の身のこなしはロングホイールベース効果なのだろう、シトロエンらしい優しさがしっかり味わえたのだった。
軽いんだからスポーティに仕立ててやろうとパワフルなエンジンを積んだら、足を固めなければならず、この味は出なかっただろう。軽いボディを不満なく走らせる小さめのエンジンにとどめたからこそ、心地良い揺れが実現できた。シトロエンにくわしい人ならピンときただろう。クルマ作りの考え方があの「2CV」に近いのだ。
ここまで凝ったデザインなのに、高価でないところも2CVに似ている。先端技術を駆使してダイエットしたわけじゃなく、無駄を省いての減量なので、フランスでの価格はC4より少し安いぐらいなのだ。日本にはガソリン1.2リッターターボとETGのコンビで導入を検討中。先週乗ったばかりなのに、もう上陸が待ち遠しい。
[レポート:森口将之]
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