日産 新型 ティアナ[2014年2月デビュー・3代目] 試乗レポート/渡辺陽一郎(4/4)
- 筆者: 渡辺 陽一郎
- カメラマン:和田清志・日産自動車
個性派のライバルに比べインパクトは弱いが、独自のリラックス感覚は魅力
Lサイズセダンは、一般的に個性が分かりやすい。同じ日産のFRセダン「スカイライン」は、フルモデルチェンジでハイブリッドに変わったものの、スポーティー指向を明確に打ち出す(2.5リッターガソリン車は旧モデルを併売)。「トヨタ マークX」も、かつてのマークIIの頃に比べると、走りの良さを表現している。「トヨタ クラウンロイヤル」は、伝統的な豪華指向を守っている。「ホンダ アコードハイブリッド」や「トヨタ カムリハイブリッド」はそれぞれ、その名の通りハイブリッド専用車として変革を遂げた。
これらの車種に比べると、ティアナはリラックス感覚を重視した。スポーティー、あるいは豪華なLサイズセダンに比べてインパクトが弱く、シルフィの拡大版のようにも思えるが、日常生活の中で気軽に使えるイメージがある。先代型と違って全幅が1800mmを上まわり、海外指向を強めたことは残念だが、クルマの持ち味は馴染みやすい。桑田佳祐さん、黒木瞳さんに似合うかどうかは疑問もあるが、同世代の私から見ると、何となく共感できるところがあった。
昭和と平成。大人の生き方の違いが、クルマ造りにも反映されている・・・
ただしこの価値観は、表現を変えれば「ヌルマ湯」だ。日本家屋のようにデザインされたセドリックやグロリアを運転した波平さんに比べると、大人としての成長が乏しい。私自身がそうだから良く分かるのだが、波平さんのように「バカモン!」とカツオ君を叱り、「ごめんなさい!」と反省させる威厳は、52歳の私には備わっていない。お父さんが若々しく、子供と同じ目線で語り合えるのは、一見すると好ましい親子関係に思えるが、それは親が子供と大差ないからだろう。
それだけで済めば問題はないが、大人の成長が乏しいと、政権がコロコロ変わったり、首都の知事が不用意な行動で引退したりする。クルマの世界では、日本全国のモータリゼーションを幅広く支え、人々の生活に深く密着しているはずの軽自動車の新車だけ増税する、といったアホらしい話まで持ち上がる。
波平さんとフネさん、桑田佳祐さんと黒木瞳さんの対比は、昭和と平成の「大人の違い」を見せつける。セドリック/グロリアとティアナの違いも同じだ。クルマは常にユーザーに寄り添い、良くも悪くも、時代や世相を分かりやすく映し出している。
[レポート:渡辺陽一郎/Photo:和田清志・日産自動車]
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