レクサス GS 海外試乗レポート(2/3)
- 筆者: 河村 康彦
- カメラマン:トヨタ自動車株式会社
プレミアム感漂う“わびさび”の効いたデザイン
日本では、最大級の4ドア・スポーツセダンという位置付けでこれまで市場に受け入れられて来たのが『アリスト』というモデル。その事実上の後継車という見方も出来る新型GSのアピアランスは、これまでのアリストに比べると「独特のダイナミックな雰囲気がちょっと後退したかな」と、正直なところぼくにとっては当初はそんな風にも感じられるものだった。
新型GSは、これからのレクサス各車に共通展開をして行く新しいデザイン・フィロソフィ“Lフィネス”に基づいたもの――デザイン担当者はそのように表現をする。それでは“Lフィネス”が具体的に一体どのような造形を示すのか…となると、それをひと言で表現するのは実はとても難しい。
要はそれは『レクサス』がそのブランド全体で狙うプレミアム・マーケットに相応しい、より現代的でありつつもダイナミックな雰囲気を表現するものと言う。が、このあたりはすでにスタイリングが公表された新型ISに加え、来年には登場というフラッグシップ・セダンである次期LSや、さらにはやはりアメリカでは好評を博しているというRX(=ハリアー)の次期モデルの姿などが明らかにならないとその全体像はなかなかつかみ難いのだろう。が、もしかするとそれは日本語で言うところの「“わびさび”の効いたデザイン」とでも表現すべきものなのかも知れない。そう聞くと、なるほど新型GSのエクステアリ・デザインは一見繊細でシンプルでありつつも、実はかなり非凡で躍動的に受け取れるアングルが隠されている事に気付いたりもする。
例えば、ロワーボディとタイヤがグッと外側に張り出したリアビューは遠目にも何とも個性的で人目を引くものだし、大胆に後方まで引かれたCピラーとリアドアのウインドウ・グラフィックは、アリストからのスポーツセダンとしての血統を強く意識させるもの。少なくとも、『レクサス』ブランドの最大のライバルと目されるメルセデス・ベンツやBMWの各セダンとは、このGSは全く異なったデザインへのアプローチを感じる事が出来るのは間違いない。インテリアの雰囲気も、いかにもレクサス流儀という印象が強い。
自ら“スポーツセダン”をうたう新型GSではあるが、そこにはことさらにドライバーだけを優遇するようなドライバー・オリエンテッドなデザイン手法は見られない。こうして乗る人すべてに共通の“もてなし感”を演じる一方で、メーターには本メタル製のパネルに最新の照明テクノロジーを加えた、凝った3連デザインのアイテムを用いていたりもする。このあたりの抑揚の効き方もやはり“Lフィネス”のフィロソフィに基づくものと言うことになるのであろう。そしてもちろん、従来型GS(=これまでのアリスト)比で50mm延長された後席でのレッグスペースなども含め、大人4名に対する十二分な室内空間の持ち主である事は言うまでもない。
厚いロワーボディに対してグラスエリアが上下に比較的薄いのは、これもまたこれまでのGSから受け継いだアイデンティティのひとつと思える部分。が、それでも視界の広がりに問題は感じない。いかにも最新のモデルらしくナビゲーション・モニターを中心に据えたセンターパネル部のスイッチ類は、その多機能ぶりを考えればかなり上手く整理をされて扱いやすい方と言って良い。
質感の高いセンターコンソール上の平面部分に配されたゲート式のATセレクターには、いわゆるシーケンシャル・モードも採用。ただし、6速という多段式ATを備えるスポーツセダンという点を考えると、ステアリング周辺にパドルを加えるという選択肢があっても良かったようにも思うが。
トランクルームの内張りのクオリティに至るまでを手を抜かないのも、『レクサス』としては当然の事。そのスペースは「特に広大」と表現するには至らないが、それでもフル4シーターのセダンして全く不足を感じないボリュームの持ち主であるのも事実だ。ちなみに、今回テストの欧州仕様のGS430の場合、フロント8ウェイ電動調節機能付きのレザーシートや7インチのタッチスクリーン式モニター、ヒーター/ベンチレーター付きのフロントシートやアクティブ・ヘッドライトなどは全て標準で装備される。
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