ポルシェ 911GT3 海外試乗レポート(3/3)

  • 筆者: 河村 康彦
  • カメラマン:ポルシェ・ジャパン
ポルシェ 911GT3 海外試乗レポート
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全てのポルシェ車の中でも最も“エンジン・オリエンテッド”な一台

そんな新しいGT3に乗り込んで好みのドライビング・ポジションを決めた後、早速イグニッション・キーをひねる。と、太いクランキングのノイズが後方から耳に届くと同時に、リッター115psを越える出力を叩き出すスーパーなスペックの持ち主であるフラット6の心臓は、あっけないほどにすんなりと目を覚ましてくれる。

ただし、一方でオリジナルのカレラよりもむしろ3.8リッター・ユニットを搭載したカレラSの方に近い音色を発しつつちょっとラフに回り続けるアイドリング時の印象は、やはりこの時点ですでに多少なりとも「サーキット生まれ」という雰囲気が漂うもの。軽くブリッピングを試みるとタコメーターの針の動きはシャープそのもの。ちなみに、このクルマの心臓が最高出力を放つのは7600rpm。タコメーター上に引かれたレッドラインも8400rpmという特筆すべき高さに位置をする。

昨今では久々に味わうズシっと重いクラッチペダルを踏み込み、1速ギアをセレクト。次いで左足の力を徐々に緩めて行くと、カレラに比べて極低回転域でのトルクこそやや痩せているように思えるもののそれでもバリオカムが大きな威力を発揮してか、アクセルペダルに触れる事なくクラッチをミートさせての"アイドリング・スタート"も無理なく可能だ。

そこからアクセルペダルを軽く踏み込んでみるとさすがに加速感は鮮烈。自然吸気エンジンならではのリニアなレスポンスと0→100km/hタイムがわずかに4.3秒という圧倒的に強力な絶対加速力のミックスが、何とも刺激的で心地良い。短かなストロークで確実に決まる6速MTは、「エンジンとのマッチング上から」カレラ・シリーズのアイシン製ではなくゲトラグ製を継続採用。2速、3速…と次々とアップシフトを行っても一向に衰えを感じさせない加速の勢いはちょっと空恐ろしいほどでもある。やはりこのモデルは、全てのポルシェ車の中でも最も"エンジン・オリエンテッド"な一台と言っても過言ではないモデルなのだ。

ところで、驚いたのはこうして"思い切りスパルタン"な性格の持ち主であるこのモデルのコンフォート性能が望外なまでに優れていた点にもある。もちろん、そんなこのモデルの脚回りが生み出す印象をひと言で述べるとしたら、PASMをノーマル・ポジションにセットした状態でも「全般的にハードなテイスト」という表現になるのは間違いない。が、それでも路面から伝わる振動の波形は角が丸められ、加えてまさしく「金属の塊からくりぬいた」かのように剛性感の高いボディがそれを一瞬にして減衰させてしまうので、不快な印象には殆どつながらない。それどころか、高速走行時のフラット感などはカレラ・シリーズに勝るとも劣らないと思えるレベル。このあたりは、まさにPASMが絶大なる効果を発揮していると実感出来る部分だ。

今回は最近のポルシェのイベントとしては珍しく、クローズド・サーキットの走行メニューも組み込まれていた。そこで改めて舌を巻く事になったのは、相変わらずほれぼれとするほどのブレーキ性能の高さ。今回用意された全てのテスト車にはオプション設定のPCCB(セラミック・コンポジット・ブレーキ)が与えられていたが、いかにハードなブレーキングを繰り返しても効きが甘くなるどころかペダルタッチすら全く変わらないこのブレーキのポテンシャルには、毎度ながら今回も心底感心させられる事になったのだ。

カレラ・シリーズ以上にシュアでダイレクト感溢れる自在なハンドリングのテイストと、すでに述べてきたように圧倒的な動力性能を兼ね備えるのがこのモデル。従来型から受け継いだそんな走りの基本的なキャラクターに加えて予想外のコンフォート性のレベルアップをも果たした新しいGT3は、まさに現在考え得る『究極の911』の姿を具現化させたものと言って良さそうだ。

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河村 康彦
筆者河村 康彦

1960年東京生まれ。工学院大学機械工学科卒。モーターファン(三栄書房)の編集者を経て、1985年よりフリーランスのモータージャーナリストとして活動を開始し、現在に至る。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤー選考委員 などを歴任。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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