ポルシェ ケイマン 海外試乗レポート(3/3)

  • 筆者: 河村 康彦
  • カメラマン:ポルシェ・ジャパン株式会社
ポルシェ ケイマン 海外試乗レポート
画像ギャラリーはこちら

“バリオカム・プラス”を搭載した新開発2.7リッターエンジン

吸気側のカムシャフト動作の位相をずらす可変バルブタイミング機構のみを採用したエンジンと、それに加えてバルブの可変リフト量メカも採用したエンジン――従来のボクスター用と今度のケイマン用2.7L ユニットとの違いは、要はこういう事になる。

こうした吸気系のコントロールの差に加え、さらに「ノッキングのリスクを低減するために気筒当たり2つの排気バルブ間にインジェクション・ホールを設け熱負荷を下げる事で、圧縮比のアップも図った」などの特徴を備える2.7L フラット6エンジンは、前述のようにこれまでのボクスター用に比べて5psと3Nmの出力アップをカタログに謳う新たなユニットだ。

とは言うものの、同排気量の心臓を積むボクスターと殆ど同等の重量を発表するケイマンの走り出し加速感は、「特に強力になったとは感じられない」というのがまずは真実だった。スポーツカーとしての視点で見てもそれは決して不足を覚えるものではないが、一方で3.4L エンジンを積む『S』との間には、MT仕様でもAT仕様でもやはりそれなりの明確な差が体感出来る。ちなみに、前述のようにボクスターとケイマンとの間に目立った重量差が生じていないのは、そもそもこのモデルが「オープンボディ先行で開発された」というプロセスとも関係が深いはず。

クーペをベースにオープン化を図れば様々な補強を免れずそこで大幅な重量増が生じるが、逆の場合にはクーペ化を図ったからと言ってボディのどこかを省略するという軽量化などは困難であるからだ。

もっとも、こうして“新開発”が行われた2.7Lエンジンに新鮮さが感じられないのかと言うと、実はそうではない。特に、4,500rpm付近から上でのアクセルレスポンスのシャープさとパワーの力強さは、やはり従来のボクスター用を確実に上回る印象だ。すなわちそれは、「よりスポーツカーに相応しいパワーユニットとなった」とも表現出来るもの。もちろんそんなユニットが搭載されるとなれば、今後のボクスターのドライバーにも反対する人は現れないだろう。

『S』に対してリアのスプリングレートをやや落とし、スタビライザーにも再度のチューニングを施すなどの“素のモデル”用のリファインを施したというフットワークは、相変わらず人とクルマの見事な一体感をアピールする最高にゴキゲンなテイストを演出。ただし、『S』の場合と同様オプション設定となる“PASM”(電子制御可変減衰力ダンパー)は、今や必須のアイテムと解釈をするべきだ。

今回のイベントには標準の17インチとオプションの18インチ・シューズ車に“PASM”無しのテスト車も用意をされていたが、いずれの場合もやはり低速域での路面凹凸を拾っての上下Gがきつめに現れる。特に、後者ではそれが低周波のドラミング・ノイズの発生にもつながり、「日本の市街地ではきつい場面が多いだろうな」と連想をさせられる事になったのだ。

そんなこのモデルの『S』との価格差は150万円。動力性能を中心とした両者の走りのポテンシャルにはやはりそれだけの価格差分の違いがあると納得をするか、それともデザイン上には殆ど差がない“素のモデル”を、より価値の高いモデルと判断するか――その評価は見る人にとって大きく分かれる事にもなりそうだ。

前へ 1 2 3

この記事の画像ギャラリーはこちら

  すべての画像を見る >

【PR】MOTAおすすめコンテンツ

河村 康彦
筆者河村 康彦

1960年東京生まれ。工学院大学機械工学科卒。モーターファン(三栄書房)の編集者を経て、1985年よりフリーランスのモータージャーナリストとして活動を開始し、現在に至る。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤー選考委員 などを歴任。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

MOTA編集方針

「車好きのみんなが見ているメルマガ」やSNSもやってます!
カー用品・カスタムパーツ

愛車の売却を、もっと楽に!もっと高く!

  • 一括査定はたくさんの買取店からの電話が面倒?

    これまでの一括査定は、たくさんの買取店からの電話が面倒でした。MOTA車買取なら、最大20社の査定額をwebで簡単比較。やり取りするのは査定額上位の3社だけ。車の査定が楽に完結する仕組みです。

  • 一括査定は本当に高く売れるの?

    これまでは、買取店に会わないと査定額がわからず、比較がしづらい仕組みでした。MOTA車買取は、申込翌日18時に最大20社を簡単比較。加えて、買取店は査定額上位3社に選ばれるために競い合うから、どうしても高く売れてしまいます。

新車・中古車を検討の方へ

人気記事ランキング
最新 週間 月間

新着記事

新着 ニュース 新型車 比較 How To
話題の業界トピックス・注目コンテンツ

おすすめの関連記事

ポルシェ ケイマンの最新自動車ニュース/記事

ポルシェのカタログ情報 ポルシェ ケイマンのカタログ情報 ポルシェの中古車検索 ポルシェ ケイマンの中古車検索 ポルシェの記事一覧 ポルシェ ケイマンの記事一覧 ポルシェのニュース一覧 ポルシェ ケイマンのニュース一覧

この記事にコメントする

コメントを受け付けました

コメントしたことをツイートする

しばらくしたのちに掲載されます。内容によっては掲載されない場合もあります。
もし、投稿したコメントを削除したい場合は、
該当するコメントの右上に通報ボタンがありますので、
通報よりその旨をお伝えください。

閉じる