トヨタ ポルテ 試乗レポート

新感覚コンパクトカー、大きなスライドドアが特徴のポルテ誕生

ヴィッツのプラットホームを使って作られた新感覚のコンパクトカー。4mを切る短い全長ながら、背が高くて床の低い独特のパッケージングを採用することで、優れた乗降性と圧倒的な広さの室内空間を作っている。背の高さはタワーパーキングに入らないサイズとなるし、床の低さは4WDの設定を不可能にしているが、それらを割り切ることで、これまでにないクルマを作ることができた。

左側のドアを大きなサイズの電動式。いっぱいに開くと前後のシートに同時に乗り込めるくらいの開口部が開く。床面は地上から300mmと低いので、老人や子供なども小さなステップで乗り込むことができる。さらに助手席を大きくスライドさせたり、背もたれを倒すことによって、室内には大きな空間が広がる。標準状態でも前後のシートの間隔はセルシオを上回るくらいの広さだから、ポルテの空間の広さが分かるだろう。

ちなみにポルテとはフランス語のドアからとった車名だという。

高級セダンにも引けを取らない、圧倒的に広い室内空間

ポルテの外観デザインはとても存在感のあるものに仕上がった。背の高いパッケージングを採用すると、とかくカッコ悪いデザインになってしまいがちなものだが、ポルテは特徴的なボンネット形状を採用することなどによって、縦横比の違和感を感じさせないデザインに仕上げている。流れるようなルーフラインによるワンモーションのサイドビューやリヤビューもそれぞれに個性的なものだ。

インテリアでは圧倒的な広さが特徴となる。低くてフラットな床面が採用されており、助手席から乗り込んで運転席に移動したり、あるいは前席から後席へ移動するなど、自在なウォークスルーが可能である。

しかも運転席に座ると頭上には大きな空間が広がるし、後席に座ると広々とした足元空間がある。さらに運転席の後ろのシートの脇には、2つのカップホルダーのほか、2Lのペットボトルが2本も置けるような収納スペースも用意されている。ほかにもアンブレラホルダーを設けるなど、収納にはさまざまな工夫がなされている。

静かで滑らかな走りはお墨付き、エンジンに余裕がある1.5Lがおすすめ

ポルテの搭載エンジンは1.3Lと1.5Lの2機種。いずれも可変バルブタイミング機構付きのハイメカツインカムで、すでに定評を得ているエンジンだ。さらに電子制御4速のスーパーECTが組み合わされており、静かで滑らかな走りは保証付きといっても良い。

ポルテは背の高いボディということもあって、車両重量が1100kg前後とやや重いため、64kwの1.3Lエンジンでは力不足の印象を受けることもあるが、街乗りを中心にしたポルテの使い方を前提にするなら文句のないレベル。1.5Lは80kwを発生し、こちらは動力性能の面でも不満のない実力になる。ポルテを買うなら、1.5Lエンジンの余裕があったほうが良いと思う。

ボディの重さに対応して足回りをやや硬めにしているので、乗り心地は特に良いというほどではない。もう少し当たりの取れた乗り味にして欲しいところ。アイポイントが高い分だけロール感もあり、走りのフィールにはより洗練した味を望みたい部分も残る。

どんな人でも乗り降りしやすい、人に優しいクルマ

こんな風に書くと嫌がられるかも知れないが、ポルテは老人用のクルマとして最適だと思う。介護が必要な人にはウェルキャブの福祉車両があるが、やや体が衰えたたり、体が固くなって身をかがめるのを苦痛に感じるようになった年配のユーザーにとって、このポルテの乗降性や室内空間は大歓迎されるはず。そして老人にも乗り降りがしやすいクルマというのは、どんな人にとっても乗り降りがしやすいのだ。その意味でポルテは人に優しいクルマといえる。

同じような発想で作られたクルマに両方のリヤドアをスライド式にしたラウムがあるが、ラウムは全高を抑えたパッケージングで室内の広さではポルテにやや劣る。ただ、逆にタワーパーキングに入ったり、あるいは4WDの設定があったりするので、これらの使い勝手の違いを考えて判断すればいい。ポルテのほうが価格的にやや安いことも、選択時の重要なポイントになるだろう。人に優しいクルマである点で、けっこうお勧め度が高いのがポルテだ。