マツダ ベリーサ 試乗レポート
- 筆者: 河村 康彦
- カメラマン:原田淳
「真の充実」という意味を持った上質なコンパクトカー”ベリーサ”
“シンプル クオリティ コンパクト”、これがマツダのブランニュー・モデル『ベリーサ』のキャッチフレーズ。イタリア語と英語をかけ合わせて「真の充実」という意味を持たせたというネーミングのこのモデルは、ハードウェア的にはボディ骨格やパワートレーンなどが『デミオ』と血を分けあっている。アテンザやアクセラ、そしてデミオなどこのところのマツダ車で特徴的なのは、スポーティ感を軸とした国際車。しかし、このクルマの場合は、多少高価ではあってもコンパクトカーにより上質で気品のある雰囲気を求めたいという、そんな人に訴求するための日本専用車として生み出されているのが特徴だ。
デミオよりも50mmほど長い3975mmという全長のベリーサのボディは、5ドア・ハッチバック1種類のみのシンプルな構成。パワーパックもデミオ譲りの1・5リッター・113psエンジン+4速ATに限定で、いわゆるグレードも設定しないという徹底ぶり。ただし、駆動デザイはFWDと4WDという2本立て。後者は日産からOEM供給される“e-4WD”と呼ばれる後輪電気モーター駆動システムを採用する。
“上質”という概念にこだわって開発された、質感の高い内外装。
よりシックでクオリティ感の高い、“大人の味わい”の演出――そんな観点から開発されたベリーサのデザインは、当然ながらエクステリアもインテリアもデミオのそれとは大きく雰囲気が異なるもの。まずは見た目の印象でデミオとは異なる顧客層にアプローチしようというのが、マツダの作戦であるわけだ。
ベリーサのルックスには、合理性の高さが外観にも現れた多くのライバルたちとは微妙に異なったスタンスが感じられる。直立気味のウインドシールドやそれを受けての長いルーフパネル、フェンダーフレアのちょっと大胆な膨らみなどがそんな雰囲気を演じている。インテリアも同様で、シンプルでありながらちょっとモダーンなテイストは、“ベース車”であるデミオのそれよりも確かにより落ち着いたものと感じられる。グローブBOXリッド裏に設けられたバニティミラーや、ハーフレザー・シート&ウッド調パネルなどからなるオプション設定の“レザーパッケージ”なども、このクルマならではの売り物だ。
予想以上に活発な走り。クルマのキャラクターを考えれば全く不満がない
ことさらのスポーティさは狙ってはいないというベリーサの開発コンセプト。しかし、デミオのそれには及ばないものの実際には予想以上に活発な走りのテイストを味わわせてくれたのは、やはり「兄弟の血は争えない」という事だろうか。
加速のポテンシャルはさしあたり十二分。デミオ譲りの軽快なエンジン音と共に素直にスピードが伸びて行く様は、決して「強力」とは言えないもののクルマのキャラクターを考えれば全く不満がない。全般に静粛性が高いのもそうした好印象に拍車をかける。ただし、そうして“暗騒音”が小さいためか高速時のタイヤパターン・ノイズやエアコンのコンプレッサー音、ワイパーの作動音(反転音)などがちょっと耳につきがちなのは惜しい。
ハンドリングも意外なほどに軽快。が、このクルマが狙った性格を考えるとステアリング切り始め時のシャープさは、むしろもう少し抑えた方が似合っているかも知れない。乗り心地は基本的には「しなやか」と表現出来るもの。ただし、路面からの入力がある程度以上に大きくなると、やや突き上げ感が強い印象になる場面もあった。
ボディーカラーによって、ユーザーの個性をより演出可能
“上質”という概念にこだわって開発されたベリーサ。そんなこのモデルの外観の雰囲気はボディカラーによって随分大きく変わる。シックで大人びた印象を演じたいのならは『ブラック・マイカ』や『ラディアントエボニー・マイカ』、『ストラトブルー・マイカ』などのダーク系がオススメだし、カジュアルな雰囲気を強調したいのならば『カーディナルレッド・マイカ』や『アークティック・ホワイト』など明度の高いものが相応しそう。売り物のひとつであるオプションの “レザーパッケージ”は、肝心のシートのレザー部分がちょっとビニール風(?)であったり、ステアリングのウッド調部分が非常に滑りやすかったりするので、購入検討の折には是非ともショールームの展示車等で実車確認をすべき。一方で絶対のオススメはやはりメーカーオプションのミュージックHDD。約3000曲をCDから直接録音出来、CD一枚分はエンジン停止後にも録音可能というこのアイテムは、是非とも注文をしたくなる逸品だ。
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