アウディ A5&S5 海外試乗レポート(1/3)
- 筆者: 河村 康彦
- カメラマン:アウディ・ジャパン株式会社
美しいファーストバック・プロポーションを纏ったプレミアムクーペ
4つのドイツ民族資本系メーカーが合併して生まれた事を表す、銀色に輝く4つ輪のマーク――現在でもそれをエンブレムに採用するのが、フォルクスワーゲングループに身を置きつつもメルセデス・ベンツ、そしてBMWという自国の“両巨頭”に肩を並べるプレミアムカーメーカーである事を標榜するアウディ。
かつては4ドアセダンやそれに派生をするステーション・ワゴンが商売の中心であったこのメーカーだが、このところはそうしたモデルのコンポーネンツを生かしたコンパクトなクーペ&ロードスターであるTTシリーズや、自らが得意とするアルミ骨格技術を駆使して生み出した初のミッドシップスポーツカーR8など、いかにもプレミアムブランドらしい特徴あるモデルを意欲的に手掛ける点にも注目だ。遠目にもアウディ車である事を識別出来る、大胆な“シングルフレームグリル”をメインとした派手な顔付きを各車に採用するのも、このところのこのメーカーのクルマづくりの大きな特徴。ひと頃は「ちょっと地味な存在」と受け取られていたアウディも、このところこうして急速に自己アピール性を強めつつあるのだ。
そんなこのメーカーも、パーソナルな雰囲気の強いフル4シータークーペモデルのリリースにはこれまで意外と慎重だった。歴史を遡れば1980年のジュネーブショーで披露をされたクワトロ(通称“オリジナル・クワトロ”)。そして、その10年後の1990年秋のパリ・モーターショーに展示をされたクーペS2が目につく程度。しかも、後にラリー界で大活躍する“オリジナル・クワトロ”では、オンロード・タイプの4WDシステムの採用を何よりも強くアピールするなど、むしろクーペ・ボディがもたらす美しさの訴求などは当時二の次という雰囲気でもあったのだ。実際、これらいずれのモデルも明確なノッチバックのルーフラインを採用。ライバルメーカーのクーペたちが、まずはセダンやワゴンとは一線を画すその流麗さを売り物とするのに対して、『クーペ』を名乗りつつもライバルとは少々異なる立ち位置を選んだのがアウディのモデルだったのである。
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