シトロエン C3 試乗レポート
- 筆者: 西沢 ひろみ
- カメラマン:原田淳
PSAの新開発プラットホームを初採用。シトロエンの意欲が込められたコンパクトカー。
ヨーロッパ16カ国で全体の33.5%を占めているのがB2(スーパーミニ)セグメント市場。ここでのトップシェアを獲得するべく開発されたのが、サクソとクサラの中間に位置するシトロエンC3だ。発表は01年秋のフランクフルトショーで、今年の4月から欧州で販売を開始。国内では10月4日からデリバリーが始まっている。
プラットフォームは、PSA(プジョー・シトロエングループ)がエントリーカー用に新開発した「プラットフォーム1」を採用。エンジン&ミッションも、同じくPSAと共通だ。コンセプトは、街乗りからロングドライブまでこなすバーサタイル(万能性)の追求という。
個性的な丸いボディーラインが「かわいらしさ」を主張。
丸く流麗な曲線とアーチ状の高いルーフラインでまとめられたスタイルは、コンパクトカーの主流のカタチとは一線を画した「かわいらしさ」を主張。国産車でいえば、女性がターゲットのマーチと同じ趣向といえる。シンプルなインテリアも丸が基調で、タウンユースの小さなクルマらしいラウンドしたインパネ回りを持つ。ただプラスチック感が残された質感はいまひとつ。欧州車のステータス性が薄れてしまっている。
国内に導入されたのは2グレード。プジョー206XTリミテッドにも搭載されている1.4Lの4気筒OHCにシーケンシャルモード付4速ATを組み合わせた「C3 1.4」と、1.6L4気筒DOHCエンジン+新開発5速センソドライブの「C3 1.6」だ。ボディカラーは全12色が用意され、水色のブルールシアがテーマカラー。外装色に合わせて、グレーとブルーのインテリアカラーがコーディネイトされる。
街乗りからロングドライブまで、パワー不足を感じない軽快な乗り味。
試乗したのは「C3 1.4」。河口湖ICまでの高速クルージングと、富士五湖周辺の一般道を走ってみた。最高出力75ps/最大トルク12.5kgmのスペックは、高くも低くもない数値だけど、パワー不足を感じる場面はなかった。談合坂のきつい上り坂も、朝霧高原に向かうアップダウンも軽快に走り抜けていく。欧州車らしく 60km/h以上のクルージングを最も得意としている。発進加速が多い街中では、シフトアップ/ダウンにギクシャク感が生じる。プジョーやルノーと共通で、なおかつ国内向けといっていい4速ATのシフトスケジュールが道路状況に合っていないのだ。アクセルをあまり踏み込まない走行が快適性を保つポイントだろう。見た目の印象では、柔らかめの足回りを想像するけど、しっかり感のあるボディが安定した乗り味を与えてくれる。
気になったのは、フロントガラス越しの前方視界にゆがみが生じること。複雑な曲面が要因と思われるが、特に太陽が傾いた時間帯は視界が見づらく目が疲れてしまうのだ。車速感応式の電動パワステも、低速域でやや軽すぎ、扱いづらさを感じる。
デザイン、快適性、実用性は高レベル。ブランドイメージの定着が鍵。
丸いカタチと3850mmのコンパクトな全長から考えると、室内空間は十分に確保されている。だけどハイトワゴンに比べると、肩回りから頭の上の空間は当然少なく、スライド機構を持たないリアシートの足元スペースも広いとは言えない。シート自体は、座面や背もたれが小さめに感じた。好感が持てたのは、国産車に近い柔らかめのシートの座り心地。カッチリしたドイツ車のシートに比べると居心地のよさが得られる。
ラゲッジは通常305Lの容量で、分割可倒式のリアシートをダブルアクションで倒すことができる。トノカバー風のモジュボードは、仕切ったり、棚にできる面白アイテムだ。
根っからのシトロエンファンは確かに多くいるけど、日本におけるブランドイメージはまだまだ。激戦区大人気のプジョーや知名度の高いVWに対抗するには、全体的なインパクトや魅力に欠ける気がする。
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