ジープ コンパス 試乗レポート/渡辺陽一郎(2/2)
- 筆者: 渡辺 陽一郎
- カメラマン:オートックワン編集部
コンパスはSUVらしく 車両の動きを穏やかに抑え 走行安定性を優先!
ジープ コンパスを発進させると、トランスミッションが無段変速のCVTとあって、滑らかに車速を高める。2リッターエンジンに1450kgのボディを組み合わせたから十分な動力性能とはいえないが、平坦路を走っている時に不満は感じない。
フル加速を試すと、4200回転付近から車速が活発な上昇を開始する。最大トルクの発生が5100回転と高いためだ。同じ19.4kg-mの最大トルクが4000回転付近で得られると、実用回転域の使いやすさが向上するだろう。
操舵に対する反応は、後輪駆動ベースの4WDを採用するジープに比べると、鈍さを感じさせず素直な印象。セダンやミニバンから代替えしたユーザーも馴染みやすい。
低重心のSUVとあって、走行安定性も良い。適度に車両が曲がりやすく、なおかつ後輪がしっかりと安定しているから不安を感じない。
素早い切り返しを強いられた時も同様。高重心のSUVにありがちな、左右にあおられる動きが生じにくく、安全で、クルマ酔いを防ぐ効果も期待できそうだ。
横滑り防止装置のESPは、挙動が乱れ始めた段階から確実に作動。運転が難しい状態に陥るのを未然に防いでくれる。
プラットフォームやサスペンションの基本部分を共通化した三菱アウトランダーの場合、操舵に対する反応が機敏で良く曲がるが、危険回避時などは後輪の接地性が削がれやすい傾向にある。
スポーティな方向性を明確にしているが、コンパスはSUVらしいセッティング。車両の動きを穏やかに抑え、走行安定性を優先させた。
同じプラットフォームを使いながら 異なる個性をもたらせたジープのクルマづくりに感銘
最も印象的なのが乗り心地だ。タイヤはコンチネンタル・コンチプレミアムコンタクト2の18インチ(215/55R18)だが、乗り心地の硬さを意識させない。フロント側がストラット、リア側がマルチリンクという4輪独立式サスペンションのメリットを生かし、重厚な印象に仕上げた。
もともとSUVの足まわりは、伸縮性が優れ、ゆったりと動くことが特徴。この持ち味を前輪駆動のコンパスにも反映させている。
環境や安全への対応が重要課題になると、開発コストも高まり、クルマづくりの合理化は避けられない。プラットフォームなどの共通化も当然の成り行きだ。
この制約の中で、いかにブランドの特徴を打ち出し、魅力的なクルマに仕上げるか。コンパスとパトリオットに持たせたキャラクターの独自性の考え方は、注目に値するクルマづくりだと思う。
日本車に目を転じると、軽自動車、さらにミニバンでOEM車の複雑な関係が築かれている。これに伴い、メーカーの個性が曖昧になってきた。コンパスを試乗して、ブランドの個性や選ぶ楽しさを損なわない共通化のあり方が見えたような気がする。
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