素朴さが心地良い、ノンターボのベーシック版「ルノー トゥインゴ ゼン(MT)」を試す

素朴さが心地良い、ノンターボのベーシック版「ルノー トゥインゴ ゼン(MT)」を試す
<ルノー トゥインゴ インテンス(左)/ゼン MT(右)> <RENAULT TWINGO INTENS(ルノー トゥインゴ インテンス/0.9リッターターボ/6速EDC)> <RENAULT TWINGO ZEN(ルノー トゥインゴ ゼン/1リッターノンターボ・5速MT)> <ルノー トゥインゴ インテンス(左)/ゼン MT(右)> <RENAULT TWINGO ZEN(ルノー トゥインゴ ゼン/1リッターノンターボ・5速MT)> <RENAULT TWINGO ZEN(ルノー トゥインゴ ゼン/1リッターノンターボ・5速MT)> <RENAULT TWINGO ZEN(ルノー トゥインゴ ゼン/1リッターノンターボ・5速MT)> <RENAULT TWINGO ZEN(ルノー トゥインゴ ゼン/1リッターノンターボ・5速MT)> <RENAULT TWINGO ZEN(ルノー トゥインゴ ゼン/1リッターノンターボ・5速MT)> <RENAULT TWINGO ZEN(ルノー トゥインゴ ゼン/1リッターノンターボ・5速MT)> <RENAULT TWINGO ZEN(ルノー トゥインゴ ゼン/1リッターノンターボ・5速MT)> 画像ギャラリーはこちら
<RENAULT TWINGO ZEN(ルノー トゥインゴ ゼン/1リッターノンターボ・5速MT)>

ルノーのコンパクトカー「トゥインゴ」に新たなラインナップ「ゼン(MT)」が追加された。エンジンは1リッターノンターボを搭載。必要最小限の出力を5速マニュアルトランスミッションで操るという、往年のフランス小型車ファンならずとも気になる組み合わせが実現した。より高出力な0.9リッターターボを搭載する他のトゥインゴとの違いとは。自動車評論家の渡辺陽一郎さんが、その素朴な魅力について語ってくれた。

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ついつい大昔のハナシをあれこれ持ち出したくなる、ルノー トゥインゴ

<RENAULT TWINGO INTENS(ルノー トゥインゴ インテンス/0.9リッターターボ/6速EDC)>

ルノーはフランスの由緒ある自動車メーカーで、1898年に創業した。今は日産と提携しているが、昔は日野自動車と技術提携を結び、1953年から1963年頃まで、日野はルノー4CV(日本仕様は日野ルノーPA54型)をノックダウン生産していたこともあった。当時の日本の自動車メーカーは、経営基盤を築いて技術力も高める目的で、日産はオースチン、いすゞはヒルマンという具合に海外メーカー車を生産していた時期がある。

このような大昔の話を思い起こさせるのがルノー トゥインゴだ。初代と2代目は前輪駆動だが、3代目の現行型はエンジンを荷室の下に49度傾けて搭載して後輪を駆動する。基本的な駆動レイアウトは往年のルノー4CVと共通で、愛敬のあるフロントマスク、背中を丸めたような後ろ姿も似通って受け取られる。

デザインはルノー 5(サンク)など往年の名車モチーフを多用

<RENAULT TWINGO ZEN(ルノー トゥインゴ ゼン/1リッターノンターボ・5速MT)>

現行ルノー トゥインゴにとって直接のデザインコンセプトは、1970年代から1980年代に生産されたルノー 5(サンク)とそのターボ仕様だ。ルノー5は前輪駆動のコンパクトカーだが、5ターボは後席を取り去って1.4リッターのターボエンジンをミッドシップに搭載するという荒業で本格的なスポーツカーに仕立てている。

ルノー 5もリアゲートを寝かせており、今のトゥインゴが継承したとされるから、話を4CVまで遡らせてもあながち間違いではないだろう。少なくとも往年のクルマが好きなオジサンとしては、4CVにこだわってしまう。

また現行ルノー トゥインゴは、スマート フォーフォーの姉妹車でもある。全長と全幅は若干異なるが、2490mmのホイールベース(前輪と後輪の間隔)と1545mmの全高、外観の基本デザインは共通だ。ルノー・日産は2010年にダイムラーと協力を結び、この成果のひとつがルノー トゥインゴ/スマート フォーフォーとなって市場に投入された。

ターボとノンターボ、2つのトゥインゴの違いを比較してみる

<ルノー トゥインゴ インテンス(左)/ゼン MT(右)>

現行ルノー トゥインゴ、国内へは2016年7月に導入された。グレードは発売時点では”INTENS”(インテンス)が用意され、エンジンは直列3気筒/897ccのターボを搭載した。トランスミッションは2組のクラッチを使うATの6速EDC(エフィシエント・デュアル・クラッチ)となる。

2017年1月にはシンプルな”ZEN”(ゼン)を追加。ターボと6速EDCの組み合わせのほかに、ターボを装着しない自然吸気の直列3気筒998ccエンジンと、5速MTの組み合わせというベーシックモデルも用意した。

こうした小排気量かつ比較的低出力のエンジンとMTの組み合わせは、少し前までフランスやイタリアあたりから輸入される小型ハッチモデルでは多くみられたものだが、今となっては懐かしさすら覚える読者諸兄の方々も多いだろう。

そこでノンターボで5速MTのトゥインゴ ゼン、ターボと6速EDCを備えたトゥインゴ インテンスを改めて試乗することで、両車の違いを比較してみることにした。

小回り性能は天下一品! 軽をも上回る驚きの最小回転半径

<RENAULT TWINGO ZEN(ルノー トゥインゴ ゼン/1リッターノンターボ・5速MT)><RENAULT TWINGO INTENS(ルノー トゥインゴ インテンス/0.9リッターターボ/6速EDC)>

まずはボディサイズだが、新型トゥインゴの全長は3620mm、全幅が1650mmだから、トヨタ パッソ&ダイハツ ブーンよりもわずかに小さい。全高は1545mmだから、車高制限のある立体駐車場(1550mmを上限とするところが多い)には停められる範囲で、天井を高めに設定した。

外観は現代のクルマでは珍しく水平基調のデザインで、前後左右ともに視界が良い。ボンネットは視野に入らないが、エンジンを後部に搭載するためにボディの前側は短く抑えられ、車両の四隅を把握しやすい。

リアエンジンの後輪駆動だから前輪の切れ角が大きく、最小回転半径は4.3mに収まる。この数値は軽自動車のスズキ ワゴンRやダイハツ ムーヴの4.4mをも下まわり、小回りの効きは抜群だ。2490mmのホイールベースはワゴンRやムーヴよりも少し長いのに、最小回転半径は小さく抑えたのだから凄いものだ。

試しに最大舵角で回ってみると、車両がターンテーブルの上で回転するような感覚があった。もちろん前進しながら旋回するのだが、小回り性能が抜群だからそのように感じる。これもトゥインゴの楽しさだろう。

軽快な雰囲気の内装はさすがフランス車

<RENAULT TWINGO INTENS(ルノー トゥインゴ インテンス/0.9リッターターボ/6速EDC)><RENAULT TWINGO INTENS(ルノー トゥインゴ インテンス/0.9リッターターボ/6速EDC)>

車内に入ると、インパネが軽快な雰囲気にデザインされている。決して質感が高いわけでもないが、ボディカラーとコーディネイトする格好で、縁取りにブルーもしくはルージュ(赤)、ブラン(ベージュ)のいずれかの色をあしらい、実用本位の日本車とは印象がかなり違う。

前席はヘッドレストと背もたれが一体になった簡易型のハイバックシートだが、サポート性に不満はない。床と座面の間隔はコンパクトカーとしては少し不足しており、手足を伸ばし気味に座る。

そのために前席のスライド位置が後退して、しかもエンジンを後部に搭載するから、後席の足元空間はホイールベースが長い割に狭い。

身長170cmの大人4名が乗車して、後席に座る同乗者の膝先空間は握りコブシ1つ分。前席と同様に床と座面の間隔が乏しいから膝が持ち上がる。座り心地は窮屈だが、後席に座る乗員の足が前席の下に収まるため、4名乗車の実用性は備わる。

エンジンを後部に搭載するから荷室の床も高いが、乗員4名の荷物が収まる空間は確保した。

ターボモデル「トゥインゴ インテンス」の走行感覚をチェック

<RENAULT TWINGO INTENS(ルノー トゥインゴ インテンス/0.9リッターターボ/6速EDC)><RENAULT TWINGO INTENS(ルノー トゥインゴ インテンス/0.9リッターターボ/6速EDC)>

ルノー トゥインゴの運転感覚についてだが、まず従来から設定のある897ccのターボを搭載するインテンスについて述べたい。

トゥインゴ インテンスの直列3気筒 0.9リッターターボエンジンは、最高出力が90馬力(5500回転)、最大トルクは13.8kg-m(2500回転)。ノンターボの1.4リッターに相当する十分な動力性能を持つ。

1800回転を下まわると駆動力が低下するが、2000回転を超える領域で走るなら不満はない。高めの回転を保てばなかなか活発な印象だ。常に過給効果が発揮され、ターボをあまり意識しないで運転できる。ちなみにエンジンノイズ(後から聞こえてくるのが新鮮)はポロポロとした印象があり、やや3気筒を意識させる。

6速EDCは前述のように2組のクラッチを使うが、変速に少し時間を要する面もあり、上手に制御されたシングルクラッチに近い。シフトレバーを前後に動かすマニュアル操作が適している。

>>トゥインゴ ”インテンス”と”ゼン(MT)”、その違いをフォトギャラリーでチェック!

ローパワーなノンターボ「トゥインゴ ゼン(MT)」だが、往年の欧州小型車を想わせる”操る楽しさ”がある

<RENAULT TWINGO ZEN(ルノー トゥインゴ ゼン/1リッターノンターボ・5速MT)><RENAULT TWINGO ZEN(ルノー トゥインゴ ゼン/1リッターノンターボ・5速MT)>

そうなると5速MTのゼンでも良いのではないか。

1リッター ノンターボエンジンの最高出力は71馬力(6000回転)、最大トルクは9.3kg-m(2850回転)。ターボに比べると数値は低く、軽自動車のターボと同等だ。

ところが運転するとこれがけっこう楽しい。

車両重量に対して幅広い回転域で駆動力が不足するが、6000回転付近までマニュアル操作で引っ張れるからだ。往年の欧州小型車を彷彿とさせるこの”操る楽しさ”を久しぶりに味わった気がする。

2000回転付近ではゴロゴロした3気筒エンジンのノイズが感じられ、滑らかな印象はないが、吹き上がりは機敏。マニュアルトランスミッションでは、巡航時を除くと感覚的に低回転域を避けて操作するから、ゴロゴロ感はあまり気にならない。

マニュアルトランスミッションのシフトストローク(シフトレバーが前後左右に動く範囲)と、クラッチペダルのストロークは大きいが、これも欧州の実用車なら当たり前だろう。スポーティではないが、日本車の小気味良く決まるシフトレバーに慣れていると、この素朴さがむしろ新鮮に感じた。

<RENAULT TWINGO ZEN(ルノー トゥインゴ ゼン/1リッターノンターボ・5速MT)>

トゥインゴ ゼン MTで峠道などを走ると、カーブを曲がる時にボディが大きめに傾く。それでもリアエンジンだからといって、アクセルペダルを閉じた時に後輪を横滑りさせる傾向は抑えられ、走行安定性は満足できる。車両の向きを変えやすい。

乗り心地は市街地では少し硬いが、欧州製のコンパクトカーに多いパターンで、速度が上昇すると違和感が薄れ、むしろ心地良く感じてくる。

世界でもあまり類をみないRR(リアエンジン・リア駆動)を採用、そのメリットとは

<RENAULT TWINGO ZEN(ルノー トゥインゴ ゼン/1リッターノンターボ・5速MT)><ルノー トゥインゴ インテンス(左)/ゼン MT(右)>

ルノーがトゥインゴにリアエンジンレイアウトを採用したメリットは、優れた小回り性能と軽快な操舵感だろう。その分だけ後席や荷室はパッソ&ブーンと比べてもかなり狭く、実用性は低い。

それなのに運転すると気分が明るくなる。内外装のデザインも含めて、おそらくフランスの人達は、クルマが好きなんだろうなぁと思わせる。

高価格車にはいろいろな価値が詰め込まれるから、そのブランドに宿る本質が見えにくい。しかし低価格車では、これだけは譲れないという本質がハッキリと表現される。トゥインゴでこそ、ルノーの本質を味わえる。

買い物などの日常的な移動に使いやすく、なおかつ走る楽しさを味わえるクルマは意外に少ない。ルノー トゥインゴは、日本の使用環境に合った輸入車だと思う。改めて60年前に日本のモータリゼーションを支えたルノー 4CVに思いを馳せた。

[レポート:渡辺陽一郎/Photo:茂呂幸正・和田清志]

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RENAULT TWINGO INTENS[RR] 主要諸元

<RENAULT TWINGO INTENS(ルノー トゥインゴ インテンス/0.9リッターターボ/6速EDC)>

全長x全幅x全高:3620x1650x1545mm/ホイールベース:2490mm/最小回転半径:4.3m/乗車定員:4名/車両重量:1010kg/駆動方式:後輪駆動(RR)/エンジン種類:ターボチャージャー付 直列3気筒 DOHC 12V ガソリンエンジン/総排気量:897cc/最高出力:90ps(66kW)/5500rpm/最大トルク:13.8kg-m(135N・m)/2500rpm/トランスミッション:6速 エフィシェント デュアル クラッチ(EDC)/燃料消費率:21.7km/L[JC08モード燃費]/タイヤサイズ:(前)165/65R15(後)185/60R15/メーカー希望小売価格:1,890,000円[消費税込]

RENAULT TWINGO ZEN(MT)[RR] 主要諸元

<RENAULT TWINGO ZEN(ルノー トゥインゴ ゼン/1リッターノンターボ・5速MT)>

全長x全幅x全高:3620x1650x1545mm/ホイールベース:2490mm/最小回転半径:4.3m/乗車定員:4名/車両重量:960kg/駆動方式:後輪駆動(RR)/エンジン種類:直列3気筒 DOHC 12V ガソリンエンジン/総排気量:998cc/最高出力:71ps(52kW)/6000rpm/最大トルク:9.3kg-m(91N・m)/2850rpm/トランスミッション:5速 マニュアルトランスミッション/燃料消費率:-km/L[JC08モード燃費]/タイヤサイズ:(前)165/65R15(後)185/60R15/メーカー希望小売価格:1,710,000円[消費税込]

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渡辺 陽一郎
筆者渡辺 陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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