ルノー ルーテシア特別仕様車「ルーテシア S」 発表会速報
- 筆者:
売れてるルノー車はキャラが濃いぃ!
今年は、ルノーの快進撃が素晴らしい。
と言ってもF1マシンのエンジンのハナシではない。日本におけるルノー車のことだ。
欧州では、大衆車や商用車メーカーとして非常にメジャーな自動車メーカーながら、ここ日本では、非常にニッチでマニアックなメーカーとして、ごく一部のコアな自動車マニアに支持されている「ルノー」。そこに着目したルノー・ジャポンの現COO 大極 司氏が2010年に宣言したのが「FTS戦略」だ。
『フレンチタッチ・トレンディ・スポーツ』の頭文字から取られたその戦略とは、語弊を恐れず言うならば、図らずも日本市場でのルノーのキャラとして定着していた"ニッチ"ぶりを「極める」というところにある。ベタなフランス車らしさ、あるいはルノー車らしさを極めたモデル、F・T・Sのいずれかに合致するモデルを中心に展開する戦略と考えていい。案外単純なようで、しかし他の米・欧各大手自動車メーカー直系インポーターではなかなか実現出来ていないことでもある。
ルノー・ジャポンの2大勢力とは
そんな中、F1直系のルノースポール社が手がけたホットハッチ「ルーテシア ルノースポール(R.S.)」は瞬く間に完売。次いで登場した新型「メガーヌ ルノースポール」もまた非常に高い人気を誇っている。ルノー・ジャポンでは現在、全体の販売台数の3割がこのメガーヌ R.S.だけで占めているというから驚く。
いっぽう、商用車出自の「カングー」も、日本車のミニバンとはまったく違うアプローチながら、ファミリー層を中心に支持を集めた。こちらもルノー・ジャポンの稼ぎ頭と言っていい。
どちらにも共通するのがエッジというか、濃いぃキャラの強さ、個性にある。
そこで言うと、欧州の地ではごく普通の大衆車、実用のアシとして市民に愛される小型ハッチバック車「ルーテシア」には、それほどのキャラの濃さはない。
もちろん日本とは違って、日常的に走る距離がケタ違いの欧州で鍛えられたモデルだけに、小さいボディながら長距離ドライブにも応えるタフさ、そしてフランス車特有の優しい乗り味などは、日本のコンパクトカーにはない魅力だ。しかしそれって・・・なかなかコトバだけでは伝え難い魅力だったりする。ディーラーでのチョイ乗り試乗でも厳しいだろう。
AT全盛のこの国で・・・あえて、の5速MT設定!
前置きが長くなったが、ここでようやく今回の特別仕様車「ルーテシア S」の出番となる。
その、ごく普通のルーテシアをベースとしながら、オートマチック車全盛の日本で、わざわざ5速マニュアルトランスミッションのみの設定で登場させたのだ。なんというキャラ立ち!
■参照:ルノー ルーテシアに限定車「ルーテシア S」発売/自動車ニュース[2011年10月13日]
とっても硬派な6速MTのスポーツモデル、絶版となった兄貴分の2.0リッターNA「ルーテシア ルノースポール」のイメージを受け継ぎ、1.6リッターエンジンの搭載でもっとずっとライトな感覚ながらも、専用デカールや16インチアルミなどで装い、スポーティなキャラで仕立てた。しかもルーテシア 1.6のベースモデルよりも実に24万円も安い、185.8万円[消費税込み]のプライスを引っさげてのデビューである。
その背景には、直接のライバルである「プジョー 207」の戦略も大きく影響している。装備を簡素化した「Style(スタイル)」というグレードを設定、200万を切る廉価な価格としたおかげで、フランス車ビギナーを中心に支持を集めたのだ。また前身モデルの「プジョー 206」にも同様のStyleグレードがあり、そちらには5速MTモデルも用意され、ニッチなMT車を愛するユーザーに人気だった。
わざわざ「FUN TO DRIVE」などと宣言しなくても、フランス車には普通に宿っているのだ
こちらルーテシアも、確かに装備は削られている。後席の窓など、今や珍しくなった手回し式だ。エアコンもマニュアル式。が、実用上なんの問題もない。1.6リッターのDOHCエンジンはベース車と変わらないし、1160kgのボディには十分過ぎる性能を備えている。欧州では実際、まだまだこのクラスではMT車が主流。と考えると、これはまさにフレンチタッチ。ATや贅沢装備で盛られた豪華な日本仕様ではなく、本来のあるべき姿で走らせることが出来るのは、イマドキ贅沢なことなのだ。日本の大手メーカーが「FUN TO DRIVE」のメッセージを掲げたことがニュースになっていたが、そんなのはフランスじゃあ当たり前のこと。ナニをいまさら、なんて言いながら、涼しい顔してMTを駆って、「タノシイ~」と叫べばいいのだ。
いっぽう、ルーテシア Sのボディカラーには、自由と平等と博愛を表すフランス国旗の3色に見立てた青・白・赤の3色を用意するという、だいぶベタだけど、とっても楽しい演出だって忘れていない。こういう逸話のひとつひとつが、愛車への愛情にもつながるというもの。
各色10台、合計わずか30台のみという販売台数もあっという間にハケてしまいそう。発表会会場で「なんでそんなわずかな台数しか入れないのか」と聞いたところ、ルーテシアのMT車(R.S.除く)は、年間でせいぜい2、30台くらいしか輸入されていないのだという。そう、つまり今回の限定車は、本来の年間販売台数分なのだ!
とはいえルーテシア S、その日の朝から予約をスタートし、午前11時の時点で既に7台の受注が入ったと発表された。ルーテシアSが気になるなら、今すぐにでも近くのルノー正規販売店に走ったほうがいい。
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