ポルシェ 911ターボ 海外試乗レポート(1/3)
- 筆者: 河村 康彦
- カメラマン:ポルシェ・ジャパン
GT3との同時リリースに込められたポルシェの自信
いわゆる“997型”と言われる最新ポルシェ 911シリーズの、バリエーション拡充の勢いが留まる所を知らない。
まずは全てのベースとなるカレラ・クーペ誕生の後、そこにオープンモデルの『カブリオレ』が追加。さらに、よりグラマラスな専用ボディを纏った4WDシャシーを用いる『カレラ4』とそのカブリオレのバージョンが加わったこの時点で、カレラ・シリーズはひとまずの完成を見る事になる。が、直後にブランニュー・モデルである『ケイマン』をリリースしたポルシェは休んではいない。そんな“弟分”とのキャラクター差別化をより鮮明にするかのごとく、今度は911に走りのパフォーマンスを大きくブラッシュアップさせたバージョンを追加という策に出た。そう、それが2006年春のジュネーブショーの舞台を飾った『GT3』と、『ターボ』登場のニュースというわけだ。
それにしても、こうして話題性を絶やさないようにと練りに練られたポルシェの新車デビューのシナリオの巧みさには舌を巻くばかり。GT3とターボを前述のように敢えて同時発表とした事も、デビュー後間もなく丸2年を迎え新車効果(?)が一段落という時期に差し掛かった997型モデルに対する走りのイメージをここで一気に高める戦略とも受け取れる。
もっとも、そんな走りのイメージリーダーの同時リリースという作戦は、一歩やり方を誤ればそのお互いのインパクトを消し去ってしまうという点で“もろ刃の剣”となる可能性を否定できないものでもある。実際、0→100km/h加速はGT3が4.3秒でターボ(MT仕様)が3.9秒。最高速は共に310km/hと、そのカタログデータは両車が極めて近い数値を競い合う。「一体どちらが『走りのフラッグシップ』なのか!?」と突っ込みを入れられかねないそんな2種類のホットモデルを同時に発表するのは、だから「得策ではない」と判断されても不思議ではないだろう。いや、大方の経営陣であれば話題性に富んだそうしたモデルは、何とか2度のモーターショーで話題を集める事が出来ないか、と画策するのが普通ではないか?
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