ポルシェ 911 ターボ 試乗レポート/大谷達也(2/2)
- 筆者: 大谷 達也
- カメラマン:ポルシェジャパン
無闇に高性能振りを主張せず、よくできたスポーツセダンのよう
エンジンは「997」の“991ターボ”でデビューしたパワーユニットの改良版で、「991」でもバリアブル・タービン・ジオメトリーを採用した3.8リッター直噴ツインターボ・エンジンを搭載する。そのうえで一部パーツの強化や噴射圧の向上、そして制御系の見直しなどにより、911ターボで520ps/660Nm、911ターボSでは560ps/700Nmのハイパフォーマンスを実現した。
こうして完成した991タイプの“911ターボ”、まずは一般道を走らせてみると、驚くほど乗り心地がいい。サスペンションの動き出しがとにかくスムーズで、路面の凹凸をほとんど感じさせないのだ。
997タイプの911ターボも、そのパフォーマンスを考えれば相当乗り心地はよかったが、新型はまるで別格。まるでよくできたスポーツセダンのようである。そういえば、エグゾーストノイズのボリュームも下がっていて、無闇に高性能振りを主張しないのも好ましい。ハンドリングにも神経質なところがないので、普段の足として使っても緊張を強いられることはないはずだ。
でも、一般道を走らせているうち、「こんな快適なクルマで、サーキットを本気で走らせても大丈夫なのだろうか?」という不安を覚えてきたのも事実。
けれども、パワートレーンや足回りの設定をもっともスポーティなスポーツ・プラスとし、アダプティブ・エアロ・ダイナミクスでダウンフォースが最大になるパフォーマンス・モードを選択した新型“911ターボ”は、左右に切り返すS字コーナーが少なくないブリスターベルクでも俊敏な動きを示し、どれほど快適になっても“911ターボ”が「本物のスポーツカー」であることを改めて証明してみせたのである。
スポーツ性を含め、総合性能で911ファミリーでトップのモデル
進化の跡はエンジンにも見られた。
スポーツクロノパッケージ(911ターボにオプション、ターボSでは標準装備)を装着すると、フルスロットル時には中回転域で最大20秒間にわたって過給圧が約0.2bar高まるオーバーブースト機能が追加されるが、これが作動すると最大トルクは911ターボで710Nm/2100〜4250rpm、911ターボSでは750Nm/2200〜4000rpmまで強化され、それこそ背中がシートバックにめり込むような加速感が味わえる。
また、「997」ではフルスロットルにしてから爆発的なパワーが発揮されるまでにひと呼吸おくような傾向があったが、「991」ではスロットルを踏み込んだ直後から加速Gが立ち上がるので、ターボラグを意識する機会はより少なくなったといる。
私はまだ試したことがないが、991タイプに生まれ変わった「GT3」に乗れば、きっと背筋がゾクゾクするようなクルマとの一体感が味わえるのだろう。
でも、“911ターボ”のスポーツ性に不満を覚える向きがそうそういるとは思えない。しかも、こちらは快適性だって確保されているし、発進加速だってGT3より一枚上手。おまけに4WDがもたらす安心感までついてくる。だから今後は、ハンドリング・スペシャルのGT3に対し、“911ターボ”は「スポーツ性を含めた総合性能で911ファミリーのトップに立つモデル」と捉えたほうが正しいように私は思う。
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