プジョー 308/308SW 試乗│ライバル VW ゴルフにはない個性、ディーゼルターボが生み出す軽快な走り(1/2)

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今やドイツ車やフランス車の違いは各ブランドの持ち味次第

ドイツ車の魅力は分かりやすい。昔から走行安定性が優れ、シートのサポート性も良いから、長距離の移動に適していた。1980年代までのドイツ車は、内装の質や快適装備に不満があったが、今は日本車と同等以上だ。その一方で、日本車の安定性も高まりドイツ車の実用的な優位は薄れたが、乗り比べると依然として差が残る。

ところがフランス車の魅力は、ドイツ車よりも分かりにくい。走行安定性は高いが、ドイツ車に比べると挙動が変わる時の滑らかさとか、走りのリズムが重視されている。言うなれば、かなり通好みな魅力なのだ。想定している速度域も、ドイツ車ほど高くはない。

そしてフランス車では、概してデザインとか色使いに遊び心が感じられ、これも分かりにくさに通じているように思う。

それでも1992年のEU(欧州連合)誕生から25年が経過して、ユーロ貨幣の流通開始から数えても15年を経た。フランス車メーカーの開発者から、「最近はドイツ市場のニーズを積極的に取り入れてクルマを造るようになった」と聞かされたのは、もはや10年以上前の話だ。ドイツ車とかフランス車といった国籍の違いは薄れ、クルマ造りに差を付けるのは、各ブランドの持ち味になったように思う。

プジョーはドイツ車風のスポーティなクルマ造りが特徴

こんなことを考えながら今回は、プジョーの主力車種に位置付けられる308の5ドアハッチバックモデル「308 GT BlueHDi」と、ワゴンの「308 SW Allure BlueHDi」を試乗した。

プジョーはフランスの自動車メーカーで、19世紀から蒸気自動車やガソリン車を手掛けている。20世紀に入るとモノコックボディ、独立懸架などの技術を早い時期から採用して、小型車を中心に車種を充実させた。1976年には、プジョーがシトロエンを吸収する形で、PSA(プジョー・シトロエン)が誕生している。

そしてプジョーは以前から、ドイツ車風のスポーティなクルマ造りを特徴としていた。定番とされるドイツ以外の欧州車が欲しくなった時、候補に挙がるのがプジョーだろう。

5ドアハッチバックの308GTブルーHDiは、VW ゴルフのライバルに位置付けられ、ボディサイズは全長が4275mm、全幅は1805mmと少し幅広い。エンジンは直列4気筒2リッターのクリーンディーゼルターボを搭載する。トランスミッションは6速ATを組み合わせた。

ガソリンエンジンに近い感覚で運転できる

最も注目されるのは、GTの名称を冠したディーゼルであること。いかにもディーゼルらしい太い駆動力が発進直後から発揮され、通常の加速なら、アクセルペダルを軽く踏むだけで済む。実用回転域の駆動力が高いから、アクセルペダルを踏み増した時の反応も鋭い。登坂路に差し掛かったり、追い越しをする時も十分な余裕がある。

吹き上がりも機敏だ。最高出力が180馬力(3750回転)、最大トルクは400Nm(40.8kg-m/2000回転)だが、フル加速をするとシフトアップは4500回転で行われた。エンジン回転計のレッドゾーンも5000回転以上で、ディーゼル特有のノイズを抑えたから、ガソリンエンジンに近い感覚で運転できる。

粗さを抑え軽快感が伴う個性的な走り

クリーンディーゼルターボを搭載したこともあって、車両重量は1470kgに達するが、走行安定性は良好だ。18インチタイヤ(225/40ZR18)の装着と相まって車両の向きが機敏に変わり、ホイールベース(前輪と後輪の間隔)が2620mmと比較的長いため、後輪の接地性も優れている。

乗り心地は硬めで、石畳の古い市街地をしなやかに走る印象ではないが、バタバタとした粗さは抑えた。その上でドイツ車のような重厚感ではなく、軽快感が伴う。このあたりがVW ゴルフとは違う308の個性だろう。

良くも悪くも光る“プジョーらしさ”

内装や居住性にも触れておきたい。試乗を開始して最初に気付いたのは、メーターがかなり見にくいことだ。速度計の針は時計回りに(左側から右側へ)回転する一般的な表示方法だが、エンジン回転計は逆回りになる。

私は308のユーザーではないが、おそらく所有してもこのメーターには慣れないだろう。オーディオのボリュームなども含めて、機械の操作や表現方法は、左から右に向けて高く、大きくなるのが一般的であるからだ。

これが例えば家庭電化製品ならばシャレとか面白さで済むかも知れないが、クルマのメーターは安全に影響する。見にくいために注視する時間が長引いた時、判断や操作の難しい交通環境が発生すると、事故防止の運転が難しくなってしまう。こういうデザインは、安全性とクルマの品格を下げるだけだから、早々にやめるべきだ。

またメーターパネルの位置も疑問だ。十分な身長があれば奥まった高い位置にあるから良く見えるが、小柄なドライバーは圧迫感が生じたり前方視界に影響を与える。

前席は腰を包む形状で、背もたれの下側の支え方が絶妙だ。座り心地はスポーティモデルとしては適度に柔軟で、心地好く感じる。このあたりもドイツ車とは違うプジョーらしさだ。

後席の居住性は低いものの、高い積載性

後席はホイールベースが2620mmに達する割に足元空間が狭い。身長170cmの大人4名が乗車して、後席に座る乗員の膝先空間は握りコブシ1つ分にとどまる。床と座面の間隔も不足気味で、腰が落ち込みやすい。前席の下側に足が収まりやすくしたものの、後席は窮屈だ。ちなみにVW ゴルフの後席には、前述の測り方で握りコブシ2つ分の余裕があるから、後席の居住性は308の欠点ともいえるだろう。

後席の居住性を大切に考えるファミリーユーザーは、ワゴンボディの308SWを検討すると良い。ホイールベースは5ドアハッチバックよりも110mm長い2730mmで、後席の足元空間も拡大したからだ。前述の測り方で握りコブシ1つ半の余裕があり、もう少し広げたいところだが、窮屈感は和らいだ。

後席の足元空間がいま一歩と感じたのは、荷室の広さを優先した結果でもある。後席を使った状態でも奥行に余裕があり、床面はフラットだ。左右の張り出しも抑えられてスッキリしている。リアゲートは比較的直立しているから、角張った荷物も積みやすい。荷室に装着されたレバーを引くと、後席の背もたれが前側に倒れる機能も備わり、積載性を重視した。

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渡辺 陽一郎
筆者渡辺 陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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