プジョー 307 試乗レポート
- 筆者: 河村 康彦
- カメラマン:芳賀元昌
生産の9割を占める5ドアが主力モデル。装備の異なるバリエーションは3タイプを用意する。
『21世紀のハッチバックサルーン』――ちょっと“ずんぐりむっくり”な307は、プジョー自らがそう語る最新モデルだ。
ショートノーズでキャビンフォワード。その上で全高が1.5mをオーバーするいわゆる“モノスペース”タイプのプロポーションが大きな特徴の307。が、冒頭述べた通りプジョーの見解は「これはあくまでも“サルーン”の一種」。そうしたコメントを裏打ちするように、先日のフランクフルト・モーターショーではこのクルマベースのワゴンも参考出品されている。場合によっては、さらにモノスペース化を徹底させた(?)ミニバン仕様の登場も考えらそうなのが307 シリーズなのだ。
日本仕様車の心臓は、現在のところ2リッターDOHCユニットのみ。アクティブな走りが売り物のプジョー車の一員らしく、3ドアを中心にMTが積極的に導入されていることもニュースのひとつといえる。
プジョーらしい軽快なハンドリングが魅力。MT仕様で本場のテイストを味わいたい。
306と比べると、サイズがひと回り以上大きく成長した307。それでもフットワークのキビキビ感が失われていないのは、プジョー社があくまでも、「敏捷な走り」を大切に考えているからだ。多くの人はここまで背が高くなると、大きなロールと鈍重でレスポンスの悪い走りをイメージしてしまうはず。けれども実際には、そうしたフットワークの鈍さは殆ど意識させられずに済む。17インチの50%偏平タイヤを履いたXSiのみならず、標準の16インチでもハンドリングは軽快。ステアリング中立付近からの僅かな操舵に対して、なかなかシャープな応答を示すのもプジョー車っぽいし、コーナーを追い込んでいっても目立ったアンダーステアを感じさせないところも然りだ。
日本では過半数を占めることになるであろうATの出来栄えは、従来からのプジョー車の場合と同様に、あまり感心出来たものではない。全般に低いギアで引っ張りがちながら、いざキックダウンが欲しい場面ではなかなかダウンシフトをしてくれなかったりする。本国フランスではほとんどMTが選ばれるに違いないのが307。「本場のテイスト」にこだわる人には、MT仕様をオススメしたい!
ゆったり座れるシートのため、大人5人が快適に過ごせる室内空間を作り上げている。
306に比べると全長が大きく伸びた307だが、一方で実はホイールベースは30mmしか拡大されていない。にもかかわらず、後席に座った際のレッグスペースに十分な余裕があるのは、このクルマのシート・レイアウトが全般的に“背の高さ”を基本としたアップライト気味なものであるからだ。
実は307の居住性の大きな特徴は「後席がとても心地良く使える」ところにある。5ドアの場合、ドア開口部が平行四辺形的で乗降性に優れるし、クッション幅が大きいので大人の3人掛けもさほどの無理なくこなせてしまう。前席に対してヒップポイントが高いので見晴らし感も素晴らしい。
“ドライバーズカー”のイメージが強いプジョー車だが、この307はプジョー・ハッチバック車史上、「最も後席が大切にされた一台」と言っても良いものなのである。
後席を折り畳むと本格ワゴンも真っ青!というラゲッジスペースの広さも特徴のひとつ。ただしグローブBOX容量はリッドの大きさから想像するよりもグンと小さく、見掛け倒しの感アリ。右ハンドル仕様でもペダル位置に違和感はないが、MT車の場合クラッチペダル操作後にコンソール部分に足先が当たりがちなのは惜しい。
輸入車のこのクラスで販売台数の50%を占めるVWゴルフが最大のライバルだ。
『21世紀初のプジョー車』である307の大きな売り物は、まず、モノスペース化を強く推し進めたそのパッケージングにあると言ってよさそうだ。VWゴルフを最大のライバルと考えるこのクルマは、先方に一歩を先んじてこうした「新しいデザイン」を採り入れたことを大きくアピールしたいに違いない。
ただし、こうした“モノスペース化”がこれからのプジョー車すべてに相応しいかどうか、個人的にはちょっと疑念も残る。ボディの大型化は重量増を招き、せっかくの背の高さも不自然なほどの頭上高を生み出すなど、まだ完全に「使いこなしている」とは思えない部分も残したからだ。
果たしてこのクルマが“巨人VW”にどれほどのインパクトを与えたのか?次期ゴルフのデビューが待ち遠しい!
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